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八ヶ岳大門沢
原口 藤雄

山行日 1961年8月14日
メンバー (L)原口、山越、小島、他1名

 新宿を昼過ぎの汽車で小海線の最終に接続、清里に10時に着き黒々とした八ヶ岳の高原の林道をライトを点けずに悠々と歩む。
 いつしか登りになり、汗ばんでくる頃には大門沢の飯場に着いた。飯場の上でツェルトに四人で入らねばならない。下半身だけ入って横になる。満天の星空が眼に入る。都会では蒸し暑く星もいくつも見えないのに何と快適な気分であろう。天の川が中央にかかり、流星が黒々とした山陰の彼方に消えていく。明日も良い天気であろう。いつしか深い眠りに落ちていく。
 寒さで目が覚める。5時、夏だというのに手がかじかむ。朝食を済ませ、しばらくすると赤岳が我々を威圧するかのように立ちはだかる。露に濡れた山道を歩き6時25分、県界尾根と分かれ大門沢に入る。枯れた沢の上、倒木が折れ重なって行く手を阻む。
 1時間ほどで出合に着き水が出ているので小休止、六つほどの滝を越した所で二俣になる。右より左の方が大きいので左に入り15mほどの垂直の棚を半分ほど登ってみたが、岩が脆く危険なので右の草付きを巻いて上に出る。センター・リッジを登るつもりだったのにAルンゼに入ってしまった、引き返すのも面倒なのでAルンゼを登ることにする。
 五つほどの滝を越えた所で15mほどのスラブを越えるのがかなり悪く、ホールドは細かく脆いので苦心する。スリップすれば100mほど下まで飛ばされるだろう、かなり涼しい気分である。
 やっとのことで越え草付きを強引に登り、竜頭峰に飛び出した、出合より4時間ほどである。目の前は金峰、その右は南アの連山、四方の眺望を欲しいままにし大休止、時間もあるので松原湖まで縦走することにする。横岳の辺りで夕立に遭いシャワーを浴び、夏沢峠まで来るうちに止んでしまった、夏の暑い日差しを浴び八ヶ岳の長い裾野を松原湖まで歩き車窓の人となった。

〈コースタイム〉
清里駅(22:05) → 大門沢飯場(23:15~5:45) → 県界尾根分岐(6:25) → 左俣出合(7:25) → 二俣(8:30) → 竜頭峰(11:35~12:20) → 赤岳(12:25) → 硫黄岳(13:45) → 夏沢峠(14:10) → 本沢鉱泉(14:40) → 稲子小屋(16:00) → 松原湖駅(17:30)


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