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谷川岳(西黒尾根~天神尾根~田尻沢)
小沢 正美

山行日 1962年3月4日
メンバー 小沢

 駅のストーブを股に置き、飯を食っているうちに明るくなった。既にスキーヤーは出て行って待合室はガラ-ンとなった。
 5時50分、荷をまとめて駅を出る。6時15分、連れの者にスキーを託し13時、天神平での再会を約しロープウェイ乗り場のすぐ前方より鉄塔目がけ急登りが始まる。
 尾根に出た途端、強風が雪片を巻き上げる。雪片の舞う樹間の斜面を消えかかったトレースをただ黙々と追う。強風を避け、大木の陰に休んでいるパーティを見やって森林限界直下でアイゼンを付ける。8時、ラクダのコブを右にマチガ沢側に回り込んだ所で先行するパーティに追い着く。濃霧と強風に舞い上がる雪片に視界は閉ざされ、深雪のラッセルになかなか進まない。しばらく彼らの尻につき休んでは2、3歩進み、5、6歩進んではストップした。憬雪小屋付近で濃霧と強風、深雪のラッセルに先行パーティは登高を諦め下山した。
 単独、ぽつりぽつり、ラッセルを繰り返すもはかどらず、ややもすれば尾根の位置さえ失いそうだ。突然、足元左に刺したピッケルの雪が落ち、クレバスが大きな口を開ける。幅の狭まった所で後続してきた「雪標」パーティのピッケルを借りクレバスを乗越せばザンゲ岩がガスの中に微かに現れる。稜線近し、グッとファイトが湧く。一段と深くなって腰までもあるザンゲ岩への急斜面のラッセルも何のその、9時30分、ザンゲ岩を左に広くなった尾根を右に回り込めば稜線はすぐそこだ。
 張り出した雪庇を破って首を出した途端、シュカブラの斜面に谷川の本峰が、左下方には半分埋まった肩の小屋が強風と共にまともに飛び込んできた。9時50分、頂上に立った。
 晴れ上がった空に爼嵓、万太郎の国境稜線が美しい。小屋の二階の窓から雪の吹き込んだ室内に腹這いになって潜り込み昼食を摂り、10時25分小屋を後に天神尾根を下る。
 尾根はずたずたに切れ、おまけにベタ雪ですぐに団子になりアイゼンの用を全然なさない。団子を引き摺って2、3のコブを乗越し、うんざりする頃天神峠にやっと11時35分辿り着く。
 日向ぼっこでゆっくりした昼食を摂り、」スキー場に駆け下り13時05分、スキーに履き替え田尻沢を滑降。思い切りスラロームを楽しんだ。

〈コースタイム〉
土合駅(5:50) → ロープウェイ乗り場(6:15) → 鉄塔(6:30) → コブ(8:00) → ザンゲ岩(9:30) → 頂上(9:50~9:55) → 肩の小屋(10:00~10:25) → 天神峠(11:35~12:30) → スキー場(12:40~13:05) → ロープウェイ乗り場(14:00)


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