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奥白根山
渡辺 靖彦

山行日 1962年7月1日
メンバー 渡辺、別所、溝越

 日が沈み都会が闇に包まれてきた頃、何処からともなく三人の山男?が東武浅草駅に集合。これより作戦を立てる。見送り多数に送られ、先日播磨君に座席指定券を買ってもらっていたため無事席を確保し方向を迷わず出発(何時も線を誤る)。三人の男が明るくなった湯元に着き、ガスに包まれた山々の黒縁に三人の微妙な感受性がブルブルと震えた。歩き出し金精峠方面を見送って一面笹に包まれたリフトの所に出る。これから急な道を登り始め1時間半で尾根に出る。北面の展望良好。早咲きの石楠花の間を縫って沢との出合に出る。これで例によって例の如く道を誤ったことを認めざるを得なくなる。これよりだらだらした道を前白根へと向かう。山頂よりの展望良好。去年行った女峰始め日光の山々に心を打たれ、特にガスの切れ目よりの奥白根の雄大な姿が印象的である。また眼下に雲を映した五色沼が灰色に見え、大ケルンで風を防ぎ朝食とする。
 これより避難小屋を経て奥白根へと飛ばす。奥白根は標高2578mではあるが火山である故奇岩に富み環境のせいもあってかなりの高度感を味わえた。それから僕達の山行では珍しくゴミに汚れていない山頂を踏むことができた。風が強くせっかく前行程で出した汗が引っ込んでしまったのである。頂上から弥陀ヶ池の道を趣を変えて真直ぐ下る。弥陀ヶ池でこの山男達があまりにも美男子だったので雨の女神に好かれ、しつこく付きまとわれた。中曽根で振り切ることができ金精峠へと向かう。金精山でやっと運命の女神は僕達に味方し一天俄に晴れ渡る。木々に間より僕達の登った奥白根はもう高く聳え、所々にある雪渓がキラキラ光っていた。金精峠への途中、菅沼が神秘的な姿を表して僕達を惹きつけた。金精峠からの下りは例の如く駆け出し、朝分かれた分岐点に着く。今日の疲れを静かなる湯元の湯で癒やし戦場ヶ原の花々に別れを告げ、三人の男は都会の闇に消えていった。

〈コースタイム〉
浅草駅(12:35) → 日光駅(3:20~4:05) → 湯元(5:10~5:20) → 前白根(7:10~8:00) → 奥白根(8:52~9:30) → 弥陀ヶ池(9:54~10:30) → 五色山(10:50) → 中曽根(10:05~11:10) → 金精山(11:17~11:43) → 金精峠(12:03) → 湯元(12:45)


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