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水無川鍋割沢下降~ヤシロ沢遡行
小磯 勉

山行日 1962年9月9日
メンバー 小磯

9月9日(晴)
 戸沢出合到着2時30分、時々雨が降ってくるが石の陰でオカンする。
 4時半、目を覚まし軽い食事をしながら明るくなるのを待つ。天気晴。4時55分水無本谷遡行開始、F1、F2に続いて小滝を二つほど越え悪場と言われているF3も右側から乗越す。早朝とて沢筋に人の気配全くなく気分爽快、どうやら本日の本谷遡行の一番手を引き受けてしまったらしい。
 左から沖源、右から木ノ又大日沢を合わせ、間もなく右岸に金冷シ沢の出合を見る。本谷の主流境沢はこの先大棚以外に見るべき棚がないので金冷シ沢に入る。沢には出合近くと奥に各1個、本谷F3以上に興味ある棚があり、奥のチムニー状の棚は半身ずぶ濡れになって水際を突破した。この上で二分した沢の右俣をとり、水流に引かれてまた右に入りガレ場の中央部水流のある所を登り切ってスズ竹の中の踏み跡を朝露に濡れながら僅か登ると塔ヶ岳直下の表尾根に出た。
 塔ヶ岳山頂には50名くらいの人が居た。西丹沢の山々は雲海の中で見えず、頭だけ見せる富士山にはレンズ雲がかかっていた。塔ヶ岳よりは鍋割沢を下降することにする。水場を右下に見て樹林中を適当に下降して行くと三段15mくらいの涸棚の上に出た。左から巻いて下る。しばらくで水流を見るようになり小滝の下降を続けていくと直登も不可能と思われる大棚の上に出た。左側から巻いて下る。沢筋の水量は豊富で10mくらいの大棚が続いて二つ現れるがやがて廊下状となる。
 水無本谷より遥かにスケールが大きい。再び続いて二つの大棚を越えると沢は開けて滝場は終わる。堰堤を越えて左岸に上がり玄倉林道をユーシンに向かう。
 大石山への登路にはヤシロ沢を選ぶ。出合は諸士平の対岸である。出合付近は灌木が茂り水流を見ない。流木が立てかけてあるF1を越え、チョックストンを持つF2を越える。
 F3は岩に苔が付着した樋状の棚であり直登はスリップの危険多く極度の緊張を強いられた。依然として水流は部分的に滑るようにあるのみで沢筋は朽木で埋まり雑草が茂り、現れる棚は全面緑の苔で覆われ沢登りの快味全くなし。死んだ沢とでも言うのだろうか、源流に至り目標としていた松の木を見失ったため1時間近くの藪漕ぎをさせられたが、大石山頂から僅かユーシン寄りに下った尾根道に出た。
 人一人いない山頂からは驚くほど立派に丹沢主脈が望まれる。石小屋沢の頭を越えザンザ洞のキレットに着く。これより同角の頭に行く予定でいたがヤシロ沢のアルバイトが身に堪えたため、同角沢を下り東沢乗越に出て中ノ沢経路を駆け下り小川谷出合を経て玄倉に出た。

〈コースタイム〉
渋沢(0:30) → 大倉(0:45) → 戸沢出合(2:30~4:55) → 金冷シ沢出合(6:00) → 塔ヶ岳(7:05~7:20) → 廊下(8:00) → 玄倉林道(8:45) → ヤシロ沢出合(9:35~9:51) → 大石山(12:10~12:25) → ザンザ洞キレット(13:15~13:50) → 東沢乗越(14:15) → 中の沢休泊所(15:42) → 小川谷出合(16:10) → 玄倉(16:58)


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