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谷川岳幕岩Bフェース
花岡 孝

山行日 1962年9月16日
メンバー (L)山越、小島(作)、三村、花岡

 すっかり明るくなってから二俣を発つ。ヒツゴー沢を右に見送り二段ネジレの滝を左から捲くとBルンゼが出合う。ルンゼを少し登った所で朝食とする。
 水筒に水を詰め、Bルンゼを登る。このルンゼの傾斜はとても急だ。登っている時はあまり感じないが、振り返ると相当高度感がでる。一発出ようものなら出合近くまで飛ばされそうだ。
 1時間半のアルバイトの末、Bフェースの基部に達する。取付きのバンドより一段下った所でプリズムにてルートを確認し、8時半登攀を開始する。
 濡れた凹状の壁を4~5m登るとトップは行き詰る。下から見ていると階段状で簡単に登れそうだがホールドが離れており、リスも全然見当たらずハーケンが打てない様子だ。何度か手を伸ばしていたが諦めテラスまで下降。トップをMにスイッチする。トップは凹状を直上せず途中より左のリッペを乗越して登って行く。身体が見えなくなってもザイルはどんどん延びてゆく。この上は悪場ではなさそうだ。
 やがて「登って来い」の声がかかり登って行く。ぬるぬるとして嫌な所だ。Mのいる所は二人がやっと立てるテラス。早速後続を確保する。Kが登って来たがこのテラスに三人は立てないのでトップは行動を開始する。トップを俺が、ラストをKが狭いテラスで確保する。ジッヘルすると言っても行動している者がスリップしたら我々も一緒に引きずられそうな所だ。
 2ピッチ目はハング右のフェースを残置ハーケンに沿って登る。なかなかの悪場だ。トップはBフェース中唯一のテラス「石楠花テラス」に着いたとのこと。しかし「ヨシ」の声はかかってこない。尚も直上するらしい。身体は全然見えず、ただ「張って」「緩めて」の声だけが聞こえる。しばらくして上から声がかかり登って行く。が、カラビナの掛け方がまずかったらしくザイルが動かない。上からの確保は出来なくなり、下でやってもらう。石楠花テラスから上が問題だ。ハーケンが3~4本打ってあり、これ以外のホールドはほとんどない。トップはアブミも使用せずにどうして登ったのかと頭を傾けてしまう。Bフェースの最悪場だ。このツルツルのフェースでザイルが通るように工作するのだが相当のアルバイトだ。やっとのことで突破し上のバンドの出る。後の二人もこの悪場では大分苦戦していた。
 草付きバンドに四人集結し一本立てる。谷川岳で一日中快晴の日というのは一年で十数日しかないそうだが、我々はそのうちの一日に当たったことになる。正面はトマの耳、右は水上の町、その向こうに赤城山とまったくの快晴だ。
 このバンドを左へトラバースし草付きのスラブに出る。これを直上すること2ピッチで尾根に出た。取付きより4ピッチ4時間の登攀だった。問題は取付きより2ピッチである。

〈コースタイム〉
水上(2:30) → 二俣(4:30~5:00) → Bルンゼ出合(6:30) → 基部(8:30) → 尾根(12:30)


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