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槍ヶ岳
原口 藤雄

山行日 1962年9月14日~16日
メンバー (L)原口、長久、山本(敬)

9月13日
 22時35分発、第二穂高にて堀口姉と会う。何時もの混雑とは変わり立つ人も居ない珍しい光景である。長久氏は寝台車で我々は靴を枕に三等寝台、山越君が見送りに来てくれた。

9月14日
 薄明るくなった松本駅からハイヤーで上高地へ。山登りを始めてからこのかたハイヤーを使ったことのない男、柔らかいシートに眠くなる。薄靄に透かして消える溶岩の押し出した跡。5月に来た時とは変わった景観である。狭くなった大正池が乳色にけむり、不気味な静けさの中を河童橋に着いた。コーヒーを沸かし朝食を摂る。
 ガスが上がりゆく岳沢をカメラに収め、西穂へ向かう堀口姉と槍見温泉で会う約束をし、静かな上高地を後にする。快調なペースで明神、徳沢園を過ぎ横尾山荘に着く。屏風岩の右、横尾谷の奥に南岳が大きく仰がれる。道は山荘の前を通り僅かで一の俣に着く。小屋から左手に大きく曲がり、沢沿いの道をしばらく行くと森林帯に入り、段丘上の槍沢小屋に着く。河原にて休んでいるとポツポツとやってきたので小屋に入る。土砂降りとなり腰を落ち着けてお茶を飲む。2時間ほどで雨も止んできたので出発。
 左岸の道を1時間半ほど歩いた頃からスコールに遭い、シャワーを浴びたようになる。傾斜が急になり30分も登ると這松が次第に多くなり、道は岩屑の堆積したところと変わり、殺生小屋の少し下の平らな所に雨の中を天幕を張り今夜の泊場とする。

9月15日
 昨夜のうちに雨は止み今朝は快晴、水を30分くらいトラバースして汲みに行く。今日の天気のように心も軽く小1時間ほどで肩の小屋。丁度その時、焼岳の噴火があり白い噴煙を高く上げていた。
 ザックを置いて槍往復。西鎌尾根の急斜面を下り痩せ尾根を登り降りし、硫黄乗越を過ぎて小休止。今日もご多分に漏れずシャワーを浴びる羽目になった。まったく雨男になったようである。樅沢岳を越えた所に二階建ての双六小屋、その左に双六池が見える。小屋で着物を乾かし、茶、菓子をご馳走になる。
 雨が上がった小屋後方に大野間乗越まで等高線沿いの小池新道を行く。1時間半ほどで乗越に着き、時間もないのでそのまま蒲田川左俣へ急斜面を下る。足がガクガクする頃、出合に着き天幕地とする。

9月16日
 天幕をたたみ沢の右岸に付けられた道をしばらく行くとわさび小屋が現れ立派な道となる。発電所を過ぎしばらく行くと右上方からのしかかるように笠ヶ岳に続く稜線が青空にそそり立っている。橋を渡り出尾根を曲がった途端、前方に焼岳が逆行の中に横腹から白い噴煙を上げていた。新穂高温泉に着いた。温泉とは名ばかりの粗末な鉱泉宿である。一番バスで平湯へ向かう。途中、槍見温泉で堀口さん達と一緒になる。平湯で温泉に入り昼過ぎハイヤーで安房峠を越え中の湯まで行きバスで往路を島々へ向かう。

〈コースタイム〉
9/14 松本(4:50) → 河童橋(7:10~8:15) → 徳沢園(9:40) → 横尾(10:50~11:25) → 一の俣(12:00) → 槍沢小屋(13:30) → 殺生小屋下(17:30)
9/15 幕場発(6:20) → 槍ヶ岳(8:30) → 双六小屋(12:30~14:10) → 蒲田川左俣出合(17:15)
9/15 幕場発(5:40) → 新穂高温泉(7:25~8:15) → 平湯

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