トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ172号目次

谷川岳集中山行
花岡 孝

山行日 1963年10月13日
メンバー (L)花岡、小沢、山本(敬)、野田

 この山行は集中登山の計画であったが、申込者は僅か11名、当夜上野に行くと参加者は4名という有様、残念やら情けないやらで何とも言いようのない気持ちになった。確かに山行予告、PR等は不徹底な点もあったろうが、一応集中登山なのだから。残念がってばかりいてもしょうがないので、とにかく登ることにする。
 稜線で思いもしなかった浦島、市川両嬢の出迎えを受けた。彼女らは巌剛新道を登ったとのこと。

一ノ倉沢2ルンゼ~Aルンゼ
野田 昇秀

メンバー 山本(敬)、野田

 『3ルンゼ』を登る小沢、花岡隊と猛登を交わしながら本谷バンドを出発する。中央壁下部を3Pほど登り、F3の下から2ルンゼに入る。南稜上部から2ルンゼを見たのより悪くなく傾斜も緩い。悪い所と言えば、嫌な感じのトラバースが1ヶ所あるのみで、あっさりとザッテルへ出る。陽の当らないルンゼから、一気に開けた明るい滝沢上部へ出る。広河原へ草付きを下降し小休止とする、オアシスのような楽しい所だ。
 Aルンゼに入る。ゴーロ歩きがしばらく続き、最初の滝はノーザイルで右側を。マッターホルン・ドームの間で2ヶ所ほどザイルを使用する。ホールドが新雪の下にあったり、スタンスが凍っていたりして感じが悪い。
 三俣に出る。中央がAルンゼの中心であると聞いているが時間の関係で我々は左俣のルンゼに潜り込んだ、上部で5mほどトラバース、腕力で強引にズリ上がると東尾根の稜線に出る。そこから新雪のベッタリついた草付きを震えながら登り切ると、オキの耳の頂上で小沢、花岡、浦島さんらが手を振っているのが見えた。

〈コースタイム〉
本谷バンド(7:30) → ザッテル(9:10) → 広河原(9:15~9:40) → Aルンゼ → 東尾根(11:15) → オキの耳(11:45)

一ノ倉沢3ルンゼ
花岡 孝

メンバー 花岡、小沢

 本谷バンドでお互いに『ガンバレ』『気ヲツケロ』と連呼しつつ別れる。3ルンゼの出合までザイルを付けずに行く。途中生唾を飲んだり、思わず岩にしがみつくような個所もあったが無事出合に到着、ザイルを結んで一安心する。
 小沢さんトップで比較的楽な登攀2ピッチを終わる。ルートはルンゼの右側、草付き混じりの壁で前方には最悪場のF2が現れる。右か左かで迷ったが、左は濡れているので右にルートを取る(結果は余計苦労してしまったが)。20mほどザイルが伸びた所で私が続く。そのままトップとなり悪場に挑む。やや被り気味で残置ハーケンにアブミをかけてこれに乗る。この上5mがポイントで草付きのハングだ。手をかけると石はどれもぐらぐらと動く、それでも草付きに手を突っ込みじわじわ登る。ここでハーケンを打つことができたが、ザクザクという音と共に入ってしまった。しかし、こえを使わなければ乗越すことができないので、ソロリソロリと体重を移し思い切って乗越した。腕は棒のようになってしまった。この上は傾斜も緩く、20mほどザイルを延ばして確保する。小沢さんも大分悲鳴を上げていた。
 次はF3だが、ルンゼの底まで降りるのも面倒なのでこのまま高捲く。40m3ピッチの簡単な登攀で落ち口に立ち、ここで小休止を取る。この辺りから上は薄っすらと雪が着きなかなか見事な景色で、落ち口から稜線まではザイルを付けずに登る。相当時間がかかると思ったが、30分で稜線に着いた。
 雪融け水でグシャグシャになった道を頂上に向かうとオキの耳近くで浦島、市川両嬢に会う。下で調べてこの辺りにくることを予想して3時間近く待っていたとの由、オキの耳でAルンゼ班と合流し、下山路は彼女らの希望により憬雪小屋から西黒尾根を下った。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ172号目次