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大菩薩峠
赤羽根 勝男

山行日 1963年11月10日
メンバー (L)赤羽根、堀口、他1名

 裂石から誰も居ない静かな夜道を柳沢峠に向かって黙々と歩いていくうちに、夜も明け富士が顔を出した。この分だと快晴は疑いなく柳沢峠で朝食を摂る。峠の展望はあまり利かないが富士山が正面に眺められた。峠より右手の踏まれた道に入る。生い茂った原生林が続き、やがて切れる頃に平坦な六本木峠に着く。四方に分かれている道は美しい落葉松林の中に延びている。落葉の道を天庭峠に向かう。元気いっぱいに歩みを進め尾根を巻き緩やかな道を辿ると、尾根の上から南アルプスが覗けたので、尾根に出て南アの展望に見とれる。青空を背負った南アの全貌が目の前に輝いていた。先に進むと高原状の台地(寺尾峠)に出る。指導標がポツンと立っていた。正面の道を行くと原生林の中の緩やかな登りとなり、じめじめした苔むす道を進むと明るい美しい草原の丸川峠に着く。人影のない峠で秋風に揺られているススキが淋しく感じられた。ロマンチックな想いをよせて歩むと再び原生林に入る。やがて崩壊地を左手奥に見ながらのんびり行くと最後の登りで汗を流して大菩薩嶺に着く。全然展望は利かないが静かな落ち着きを与えてくれる。下りにかかり唐松尾根の分岐点を経て雷岩を越えると草原の斜面が現れる。右手には南ア、八ヶ岳、左手には道志、甲武相、正面には富士、御坂山塊、後方に奥秩父の山々が大パノラマの如く展開して大変に気持ちが良い。草原の中で昼食を摂り、ススキと展望を楽しみながら昼寝をする。1時間ほど休んでゴロゴロした道を下ると、沢山の石や地蔵がある大菩薩峠に着く。首なし地蔵がポツンと立っていた。それが名作『大菩薩峠』を思わせて淋しい感傷的な雰囲気をかもし出していた。ジグザグ道を下降し長兵衛小屋過ぎこの下の裂石に着いた。

〈コースタイム〉
裂石(4:50) → 柳沢峠(7:10) → 六本木峠(8:10) → 天庭峠(9:25) → 寺尾峠(10:45) → 丸川峠(11:05~11:20) → 大菩薩嶺(12:30~12:50) → 大菩薩峠(13:15~15:00) → 勝線荘'15:30) → 長兵衛小屋(15:55) → 裂石(17:10)


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