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鹿島槍北壁主稜
山本 敬三

山行日 1964年5月1日~5日
メンバー (L)山本(敬)、花岡

5月1日(雨)
 大町で縦走帯と別れて大谷原までハイヤーを飛ばす。荒沢出合いより冬のルート通り天狗尾根に取付く。踏み跡は割合明瞭についているが尾根上は藪が酷く、荒沢通しに行った方が良かったかも知れないと後悔しながら藪漕ぎを続けるうち、バテてしまい2000m地点にテントを張る。

5月2日(曇)
 降り続いた雨も止み、今日は天狗の鼻までなのでのんびり出かける。昨日と同様藪に悩まされやっとの思いで鼻まで辿り着く。意外と他のパーティがいないのに驚いた。午後から偵察に出かける。荒沢奥壁は手に取るようにルートが判る。少し一ノ倉沢に似ている。北壁は正面から見られない。下部は切り立った壁をなしているが上部は藪尾根らしく、比較的楽に登れそうだが未知のルートだけに不安を感じる。

5月3日(雨)
 停滞。

5月4日(晴)
 いよいよ北壁を登る日が来た。気楽にいこうと思うが自然と緊張してしまう。鼻から100mぐらい下った「逆くの字形」の沢を下る。カクネ里の底に降りて北壁を正面から見るとこれから登る主稜ははっきり確認された。カクネ里は一度歩いてみたい沢だ。遠くから見るときれいな沢だが実際にはデブリの堆積が凄く、雪崩の凄さを物語っている。アイゼンを軋ませて1時間ほど登って基部の尾根上に出て一服していると、何組かのパーティが姿を見せやはり気違いがいるものだなあと思う。早速アンザイレン、灌木を頼りに2ピッチ登り、左側のルンゼに降り滝の左側から登り滝上に出る。そしてルンゼをトラバース気味に登り岩峰上へと出る。もう核心部は終わったようなもの。そこから上はルートはどこでも取れるが、ルンゼ内は凍っているので主稜通しに這松を頼りに登る。数ピッチ登るがあまり藪が酷いのでザイルを外す。尚も木登りを続けていくうち稜線が見えてきたがまだまだ遠い。稜線の雪庇は今にも落ちそうである。高度を稼ぐにつれて這松も短くなり歩きよくなった。丁度12時頂上に立つ。あまり簡単に登れたので何か物足りないようだ。1時間ほど休んで帰路は天狗尾根を下る。

5月5日(晴)
 荒沢北稜も登るつもりでいたが、食料が不足したため下山を強いられる。

〈コースタイム〉
5/1 大谷原(7:30) → 荒沢出合(8:30~8:40) → 第一岩峰下露営(13:00)
5/2 幕場発(8:45) → 第一クーロアール(10:30) → 天狗の鼻(13:00)
5/3 停滞
5/4 幕場発(4:45) → カクネ里(5:30) → 取付き(6:45~7:00) → 岩峰上(8:30) → 稜線(12:00~12:30) → 幕場(14:45)
5/5 幕場発(7:00) → 第一クーロアール下(9:00) → 荒沢出合(11:30) → 鹿島部落(13:30)

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