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北アルプス縦走 燕岳より穂高へ
佐藤 昇弘

山行日 1964年7月31日~8月3日
メンバー 小沢、佐藤

7月30日
 23時発「第二白馬」に乗るため4時半に新宿に行くが誰もいない。
 8時半頃、甲斐駒の帰りの山本敬三君がブドウの土産を差し入れに来てくれ、一緒に話しているうち小沢さんが現れる。発車10分前頃原口君が来てくれ、また前会員の高杉君が読売新道に行くとかでばったり。込み具合は殺人的で立って眠る人も居た。
7月31日 晴時々ガス
 朝6時有明駅に着き、駅前よりバスで中房温泉行に乗車、6時45分中房温泉着。水筒に水を入れ8時20分出発。第一ベンチから第五ベンチまで順調に過ぎ合戦小屋10時10分、少し歩くと高山帯に入り這松の花が咲き乱れ、山に来た感じが身に染みる。
 燕山荘11時30分。天気はガスり頂上は中止して1時間ほど昼寝をする。12時15分発。蛙岩の中の道を通り抜け、これからの大天井岳までの道は危険な場所もなく淡々と歩み大天井岳を過ぎてヒュッテに3時着。小屋の傍ではテントを張らしてくれないし、おまけに水がバケツ一杯100円也ときたモンデ。トサカにカッカッとくるね。米をとぎビンにできるだけ水を入れて余りを撒いてやる。「言い方によっては態度があると思え」と小屋番に言いたかった。西岳の見える稜線でテントを張り、夕食には早いがラジウスに火を点ける、何とも言えない良い気持ちだが虫の多いのには閉口。ワイパーを忘れたこと、悔やむことしきり。夜8時頃まで小沢さんの南アルプスの想い出を聞きながら眠る。
8月1日 快晴
 5時半に出発。黙々と一本道の縦走路歩き。6時35分西岳小屋着。ここも水不足でビン1本20円也ときた。水は大切なので買い、キジ打ちに御トイレに行く。風通しは良くハエはブンブン。下にサシ(釣語:本名ウジ)うじゃうじゃ。文明は山にまで...いやはや最高。
 西岳からの眺めは素晴らしい。目前に槍ヶ岳、右に北鎌尾根、左に南岳、キレット、更に左に北穂、前穂と見渡す限り山また山。当たり前だ!!すんません。
 7時西岳小屋を出発、これより30分水俣乗越までガクガク下る。ああもったいない!!登りは3時間、四つん這いでハイドウドウ、ハイドウドウ、こんな楽しくはなかったんだ本当は「ね、小沢さん」今思えばこの東鎌尾根が一番苦しい所であった。11時に5分前、槍ヶ岳山荘着。快晴の中で水を飲み過ぎてグロッキー。岩陰の一本は格別である。槍ヶ岳山荘で水をもらったらロハ、嬉しいね。気持ちいいのでジュースを2缶買う、60円也にくいねー、まんまと引っかかった、商売上手だね。槍の頂上まで行列で山頂は割愛。我々の見ている前で槍の途中から男の人が落ちる、重傷であると聞いた。あんな何でもない所で落ちたのは心のゆるみからであろう。そう思うと一瞬心が引き締まる。天気は憎いほど雲一つない快晴。
 笠ヶ岳、後立山、白山等360度くまなく見える。大喰岳、中岳を喘ぎ喘ぎ歩き、やっと南岳小屋の見えるピークに着く、この小屋は水場なしと聞く。これよりキレットの下りで急な道を慎重に下り、2時45分キレット下に着く、後北穂まで3時間、歩く気力はあるが小沢さん曰く「無理せずここにテントを張ろう」と嬉しかったね。ブラボーを心の中で叫んだ。笠の方に雷が光り一雨来そうなのでテントの周りを掘る。
 槍から北穂小屋に向かうサブザックのハイカー10名くらい通り抜ける。雨に降られでもしたらと心配しながら夕食を4時半に摂り、6時にテントにの中に入り、明日は2時起きと決定。
8月2日 快晴
 夜中に雨も降らずその心配もない。2時10分気象。生まれてこの方2度目のこの早さ、梅干しで無理に詰め込む。3時10分発、キレットは気を付けないと危険で、やはり一泊してよかった。薄暗い道をカンテラ下げて慎重に登る。吐きそうになったが吐くとバテると言うもんだから喉で止める、この苦しさゲップゲップああ牧伸二だ?!
 6時に北穂小屋に着く、ここでも水はタダ、また嬉しくなってジュース1本...。いけねえ高山ボケだ。6時10分北穂頂上着。頂上曰く「ヘリポートにつきケルン禁止」ときたよ。頂上寄りの眺め、槍、笠、八ヶ岳、中央、南アルプス、大パノラマ、いいと思うヨー。槍をバックに1枚写す。できた写真を見ると槍ヶ岳も良かったが彼も惚れ惚れするほど素敵に映っていたよヒヒー、眼下は滝谷だが凄い。今度遊びに来ようっと。
 涸沢槍のコルで小沢さん手帳落としたとのたもうた。さあ大変、現金全部と身分証明書、定期券等全財産パアー。引き返すのも億劫。ままよと歩き出す穂高山荘9時10分着。小休止の後、奥穂の登りで小沢さんパトロールの人に手帳があったら木村さんの所へとことづけする。10時10分奥穂山荘着。ここから西穂へ行く予定であったがガスってきたので頂上より吊尾根をグングン下り、岳沢ヒュッテ12時10分着。故山越君の遭難の時の礼を小屋の人に伝え、昼飯も食わずどんどん下り我が下山家の本領発揮する。上高地2時40分着、人人人でがっかり。釜トンネルで自家用車がエンコとか、そのあおりでバス不通。足止め8時間。松本へ夜中の12時30分着、2000人くらい上高地泊りと聞いた。
8月3日
 7時20分発「第一白馬」で無事帰りました、尚、小沢さんの手帳ザックの中にありました。とんだ茶番劇でした。
 大変お待たせしました、閉店の時間でございます。なお会費はお早めに収めてください。ありがとうございました。


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