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奥秩父を歩く 其の一 三峰~雲取山

 奥秩父の主脈は、先ず三峯神社から発し、金峰山の五丈岩から金山でピリオドが打たれるのが普通である。一昔前は武甲山も奥秩父に入っていたが、最近では雲取山を奥多摩に区別する人が多い。時代も変わったものである。秩父鉄道の終着、三峰口からバスが荒川に沿って大輪まで入り、荒川に架かる登竜橋を渡る。この荒川は遠く甲武信の麓が源となり、真の沢、手戸沢、尻無沢、市ノ沢など奥秩父の名うての沢が本流に注ぎ、更に大血川、川浦谷、浦山川等を分け、名勝長瀞を有する。
 さて橋を渡り、少し登るとケーブルの三峰駅があり神社へと運んでくれる。三峯神社はいかにも奥秩父らしく原生林に昼なお暗い。その黒木立の中に立つ随神門を潜り縦走が開始される。右手には和名倉山があくまでも大きく肩を怒らせている。ほぼ平坦な道を完備された道標に従っていくと、やがて太陽寺への分岐点に出る。文政年間に刻まれたという小さなお地蔵さんがある前地蔵、続いて地蔵峠は目前だ。この峠は頗る展望が良く、両神の鋸歯が北の空を飾り、右に荒船、遠くに浅間から上越、日光の山々が見え、さあこれからだという感を深くさせる。歩を進めれば秩父宮のレリーフがはめ込まれた岩がある霧藻ヶ峰に着く。ここには小屋もあり甲武信、国師辺りが望まれる。そこから一下りでお清平。小屋の跡も痛々しく、何か伝説的な臭いを感じさせ、ここから前白岩への急登が始まる。前白岩を過ぎ、下りになると白岩との鞍部に白岩小屋が建っている。この北寄りの場所からは木が透けていて、荒沢出合いから惣小屋辺りまで大洞川の大きなうねりが一望され、その水源を取り仕切る三条ダルミ、その横に牛王院平が輝いて見える。ここまで来ると雲取も指呼の間だ。再び原生林の中に飛び込み、やがて倒木が多くなり明るい開けた所に来ると白岩山がある。三角点は道を外れた樺の中にあり見落とし易い。そこから芋の木ドッケまで下り一方で、芋の木ドッケから長沢背稜が分かれ日原へ出る。途中、小川林道と分かれ更に一杯水を経て川苔山へと続く。登りには不向きだが下りにはなかなか捨てがたい長沢背稜である。
 芋の木ドッケ付近は鬱蒼たる原始林に囲まれ、最も奥秩父らしい所だと思う。その中を大ダワへと下ると日原へ下る大ダワ林道が分岐され、小屋へと向かう。この日原へ下る大ダワ林道は少々長いきらいはあるが樹林帯の中の静かな道で、紅葉時はさぞ美しいことであろう。大ダワから雲取小屋まで一投足、笹の中の道を行けば手前に雲取ヒュッテ、山頂寄りに雲取小屋があり、どちらも500人以上泊まれる大きな小屋である。頂上に用がなければ、右に三条ダルミへ、左へブナ坂への巻き道がある。小屋から原生林の中を登れば頭上がぱっと明るくなって山頂に立つ。展望は申すまでもない。都で最高の山である。大菩薩の山々、御坂、丹沢、富士、南ア等広大である。しかし、何と言っても西に縦に連なる奥秩父の次第に高くなる山並みは、我々の胸をときめかせるであろう。山頂の避難小屋から右に取れば縦走路である、左へ取ると鴨沢への下り道で、防火線について下ると知らずにブナ坂へと決まってしまう。ここで山頂を巻いてきた道と合い、七ツ石へと登っている。これは俗に石尾根と呼ばれる尾根で、七ツ石、六ツ石、鷹ノ巣と著名なピークを連ねて氷川に至っている。途中、鷹ノ巣から日原へ下る道があるが判りにくい。鴨沢へは七ツ石を登らず、下り道を取るとやがてバス停の横に飛び出る。
(次は雲取から笠取まで)


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