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安達太良山ツアー
小沢 正美

山行日 1965年1月30日~31日
メンバー 小沢、他

1月30日(晴、風強し)
 安達太良山は智恵子抄にも読まれた東北の山で大きく裾を広げた美しいドームに乳首のような突起を乗せた優美な女性的な山だが、鉄山、矢筈の森、馬の背の稜線は全く対照的な荒々しい岩稜、岩壁と荒っぽい山姿だ。
 さて、場の岳スキーバスに便乗させてもらい午後11時過ぎ岳温泉に着く。我々は町外れの温泉神社の縁側に一夜を明かすつもりでいたが、飯場小屋を見つけたのでそこに潜り込む。
 7時小屋を出発、リフトの下を第一、第二と登り、ヒュッテの裏手よりゲレンデを外して夏道に入ると潜りが激しくラッセルに大汗をかく。頂上右に深く切れ込んだ谷が迫り、ほどなくだらだらと下ってカラス川に出る。早速右岸の高台に天幕を張る。午後は粉雪のゲレンデで終日滑りまくる。
1月31日(晴)
 7時天幕を出る。カラス川を渡って緩く迂回するとすぐジグザグの登りが勢至平へと続く。やがて登り切る頃、岳温泉へ引湯する湯管と合し右に一行き樹間を抜ければ展望はいっぺんに開けて正面に籠山、鉄山の黒い岩壁、矢筈の森の岩峰、そして目指す安達太良山のドームのスカイラインが青空にくっきりと浮かぶ。八ヶ岳に劣らず強風の山で、今日とて勢至平に入ると遮るものの何もない雪原で雪片が頬を刺す、睫毛が真白に凍り付く、湯管に導かれ40分も平地走行すると湯川渓谷に突き当たり、大きく急斜面をトラバースすると雪に埋もれたくろがね小屋は鼻の先、一気に小屋めがけて滑り込む。
 くろがね小屋は2年前に三階建てに建て替えられたばかりの立派な小屋で、日本の山小屋で温泉風呂を持っているのはこの小屋だけだと小屋のおやじの自慢の一つだ。
 くろがね小屋もこれから4月にかけて沼尻へ野地へとツアーの基地として賑わうことだろう。
 小屋の裏手より矢筈の森、岩峰の裾を回って籠山とのコルよりカラス川源頭を左岸沿いに籠山を回って勢至平に滑り込むつもりでいたが、雪不足でブッシュが酷く、籠山の北側を回れば雄大な粉雪の斜面が待っていた勢至平めがけて大斜面の滑降が始まる。5人そろって思い切りすっ飛ぶ。落葉松の樹間を雪煙を上げつつ雑木の小枝を潜れば旧道との分岐点、大滑降も一応終わってジグザグの下りをデラとボーゲンで下り天幕に戻る。熱いミルクで昼食を済ませ荷をまとめ、特大キスリングを背にへっぴり腰。ウンチングスタイルでゲレンデを蛇行。
 安達太良山スキー行を終わった。


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