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初山行
原口 藤雄

 今から12年前だったと思うが定かならず。光陰矢の如しと言うが、全くその通り。
 僕は中学一年生。まだかわいい盛り、いや何も言いたくないがホントに無邪気でした。9月の柿のなる頃、隣の牛乳配達のお兄さんに誘われて、学生服に学生帽、運動靴、何も持たない渡り鳥、人に連れられお山参りという訳で、浅川駅(今の高尾駅)に着いたのは10時頃。バスに乗ったのかどうかも分からない。サイフの中身も分からない。全て人任せで一銭も持たずに出かけた訳でした。大きな鳥居があったのは覚えているが、確かケーブルには乗らず、階段状になった広い道があり、一行オノコばかり6人は途中から競争ということになり、駆け足で登ったのであった。風景も何も覚えていない。峠の茶店だったと思うが皆の美味しそうに食べているオデンを横目で見ながら椅子の上でひっくり返っていたのが何とこの私であったが、このことはお恥ずかしくてお初にご披露する訳ですハイ。その時山の味というのはオデンの味とは違い何と苦しいもので二度と来ないとお天道様に誓ったのですが、今では苔古した身でのさばっている訳です。何と世の中はままならないものですね、今頃山に好かれなきゃ奥サンでも貰って水入らずの生活をしていたかも知れませんね!
 小仏峠からは割と楽しい下りで途中、渡し船で川を渡り、相模湖へ出た。
 これが私の初山行、味もそっけもないもので景色も何も覚えちゃいない。恋の話もしなかった、仕事の話もしなかった。苦しいことのみ思い出す、ああわが青春は過ぎ行かん。
 次号は小沢氏にお願い致します。モートー


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