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谷川岳一ノ倉沢 衝立岩正面壁登攀
横田 貴男

山行日 1965年5月10日~11日
メンバー 横田、他

5月10日 雨のち曇
 土合に着くと雨と言います天気、駅で3時問ほど様子を見て、雨も上ったので一ノ倉沢出合に。雪渓を登って衝立スラブをトラバースして基部へ。
 今日は時間的にも登攀は無理なので、明日登攀することにしてグリセードで出合小屋へ。

5月11日 晴
 3時半、朝食後出発、4時40分取付く。約20mのフェイスに取付く。朝早いので冷たさと寒さがひどく手が効かない。20m登ると二人用のテラス。ここは一昨年2度登った所だ。次に第一オーバー・ハングだ。ザイルは11ミリ40m、8ミリ60mの2本、テラスから4mほど登ってハングの下を右斜めに、右に入った所からはハングだ。ここからアブミの登攀で5mも出ているハングである。あと一回アブミを使うとハングを乗越ることが出来るが、残置ハーケンに手が行かず、一気にビナをかけると、この二枚重ね打ちのハーケンが抜け、4m程落ちる。完全に宙づり良い気持でないネ。
 下の川本君(関東山岳OB)も心配する。赤ザイルを引いてもらう。ハーケン打ってハングを乗越すことが出来た。
 ハングの上は垂壁になっている。約6m登って一人用テラスへ。ここでザックを上げる。このテラスは一人やっと。次は、衝立岩でも最も困難さを持つフェイスとハングだ。このテラスでバナナをかじる。本当にうまかった。
 活力を付け、第二ハングにかかる。85度の壁をバランスで登る。第二ハングは吊上げ、途中ボルトが抜けていたのには大変困った。ハーケンがやっと入るリスがあって打つが、5ミリくらいしか入らず、一気にアブミをかけ体を乗せると、ハーケンがくの宇になってしまう。
 約1時間以上の苦闘の末、ハングの上へ。ハングの上に小さなスタンスがあり、少し登ると土の詰ったバンドだ。ここでジッヘルする。下のK君も片足で1時間以上もいたので足がシビレて登れないときたわい...。
 ここで「すごくおいしい昼食」、水はないし、喉はカラカラ。
 次はK君トップに立つ。右上へ登ると外傾バンドだが、彼はここでジッヘルする積りだったが、また登る。三ヶ月ハング下のフェイスを。悪いらしい、フリークライムをまぜ、登っている。次にアッと言う声と共に彼は4mくらい落ちた。声をかけると、怪我をしたらしい。ザイルを引いてとの声。力一杯引く。もう少しで第三ハング下のテラスらしい。登って見ると頭を大部切っている。手当をしたが、これ以上の登攀は不可能かと思われる。しかし彼は登るとのことで、私がトップで登る。第三ハングを越え灌木帯に入る。ザイルなしでも登れる所だ。洞穴下のチムニーでビレー。
 水がチョロチョロと出て居るのでか口を岩につけ 呑む。何とも言えないうまさ。  川本トップでツルベ式に洞穴へ。あまり石を落すなと声をかける。
 今度は衝立岩最後の大ハング、私がトップで洞穴の左に取付く。
 ハングをアブミで登るが、第一、第二、第三、そしてこの第四ハングを登るので、体力を消耗し、もう力が出ない。衝立岩でも高度感が最も高い所だ。350mはあろう。下を見ると凄い。こんな所から落ちたら体はバラバラだろうと下のK君と話しをする。このハングの登り終りでスリップし、落ちる。右肩を一ヶ月の怪我である。K君がノーザイルで登って来てボルト1本打ってトップ交代する。このような所でトップ交代は危険であるが、昨日出合で練習したので、うまく出来てトップは大テラスへ。この上は悪い草付の壁を登り灌木帯を登り、衝立の頭へ。2人共負傷しての登攀だった。2人で開かない手で握手。ビールを。うまいな...。
 雪渓の一ノ倉尾根を登り、小屋へ。
 衝立岩は更に困難さを持つ壁であり、技術的にも不足だった。ボク達もこれからまた練習をし、体力を作って次の岩場へ。

〈コースタイム〉
基部(4:40) → 第二ハング(11:00) → 洞穴(14:00) → 衝立の頭(17:00) → 一ノ倉岳頂上小屋(21:30)


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