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白毛門
牧野 盛治

山行日 1965年10月10日
メンバー (L)牧野、山本(義)、江尻

 係が野田氏であったが、山敬氏になり彼が負傷のため、三転して小生に廻ってきた。
 新人2人を連れ、未明に土合の駅に立つ。晴天が続いたせいか、上野発10時の列車でも相当の人が降りた。しかし天気の方はすぐれず、今にも泣き出しそうで、嫌なものである。白毛門の急登は暗いうちに、と言うことで人息で一杯の駅を後に懐中電灯の列を追いかける。白毛門への道に入ると、ぱったりと人影がなくなり、にわかに寂しさをおぼえるが、それを振り切るように登りへとかかる。が前日の雨に濡れ、木の根が露出している道は歩きにくい。それでなくても「胸つき八丁」ときている。谷川岳はガスで真っ暗、わずかに段々と小さくなる土合駅の灯に慰められるが、それにしてもきつい登りだ。
 辺りが明るくなる頃、ようやく森林帯を抜けるが、と同時に強風が顔面に吹きつけて寒い。雨もやがてみぞれに変ってくる。土合から丁度3時間、ようやく白毛門の頂上に立つ。計画ではここから朝日、笠方面を縦走するのであるが、悪天候のために引返すことにする。みぞれが一段と強くなり、他のパーティも全員引返すとのこと。強風の頂上にガタガタ震えながらしばらく居てから、今登ってきた道を一目散に駈け下る。。遠く東の空はきれいに晴れ上って、こちらはこの天気。まったく頭にくるよな!
 明るくなってみると山頂付近は美事な紅葉には未だ一寸早いようであるが、充分に眼を楽しませてくれる。ガタガタ震えながら登ってくる人達をしり目に、土合目がけて急な滑り易い道をボインボイン下る。いかに暗かったとはいえ、こんな道を登ってきたのかと思うと感無量。膝が笑い出す頃ようやく下に着く。未だ8時だが、昼過ぎの錯覚に陥いり、どうしようもない。
 こうして朝飯を喰っての帰京に相成る。谷川を目指した登山者も続々と下って、駅は不満顔の若者で一杯。その頃、白毛門付近にも大陽が照ってきて、紅葉が映えている。重ねて頭にきたね。しかし「勇気あるテッタイ」も山ヤには必要とばかり、帰りの列車に乗り込み、980円也を損した感情を抑えて帰る。そして3人曰く「ベンキョウになりましたア」


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