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初山行
山本 敬三

 初山行と言ってもやはり記憶力の鈍い方、思い出に残っている山行を記する。高校時代の仲間4人で行くことにした。自分達で計画を立てて行くのは初めてだろう。所は丹沢、表尾根コース、前夜はヤビツ峠の小屋で一泊した。ヤビツ峠の朝は実に素晴らしかった。朝やけ雲が真赤に輝やいている。朝やけが悪天候の前ぶれなどと全然知らない。峠からは林道を行くと指導標があった。右、札掛、左、登山道、地図を調べてきたやつが札掛を通るんだと言うのでそのまま林道をどんどん進む。歩いても歩いても林道である。それでもコースを間違えたと気付かない。とうとう札掛へ着いた。さて、そこから道が細くなり、やっと山道らしくなった。ところが20分も行かないうちに道が無くなってしまった。その時初めて道に迷ったことに気が付いた。沢に出てしまい道が判らない。そのうち雨も降りだし、だんだん怖くなり引き帰すことに決定、すると一人の男の人が登ってくる。聞いてみると表尾根なんていうのはてんで方向違い、それでもこのコースにも道があるはずと言うので、その人の後に従いついていく。あったあった、沢の対岸にちゃんとついている。僕たちは安心してその人の後に続いた。だんだん道が険しくなり、沢をどんどん詰めていくと尾根に飛びだした。出た途端に物凄い風(後で聞いたらちょうど豆台風が来ていたそうだ)、びっくりして木にしがみついたきり動けない。これではとても登れそうもないと言うので下山、勇気ある撤退なんて言うもんじゃない。恐れをなして逃げ帰るのである。苦労して登ってきた道を引き帰す。ほっとしたり、がっかりしたり、あとは長い道を雨に濡れながらテクテク歩き、どうやら無事帰ることが出来た。とにかく失敗ばかり、計画ではこんなはずじゃなかった。だがかえってそれが印象に残り今でもはっきり記憶している。その後も僕はよく道を間違える。そそっかしいのか、あさはかなのか、失敗は成功のもとと言うが、現在、成功したとは思えぬが、とにかく無事山行を続けている。これも一重に会員皆様方のおかげです(これはほんのおせじ)。
 次回は野田さん、お願いします。


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