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ボンクラ男のある山行(荒川岳)
黒須 正

山行日 1966年7月7日~10日
メンバー (L)山本(敬)、五十嵐、山本(義)、黒須

 夜の新宿を、ボンクラ山男4人、南アルプス目指して出発した。1日半かかってやっとの思いで千枚岳まであとワンピッチ、という所まで来た頃は、前日からの風雨が増々強くなり、寒さに震え出し動作は非常に鈍くなり、このまま稜線に出ることは危険なので(千枚岳に小屋があるらしいが、はっきりしないこと、予定の時間より、遅れ気味であることなど)一応偵察に山本さんと五十嵐さんが出掛けた。私達は寒さに震えながら両氏の帰りを待った。間もなく「小屋は見つからない、そこでビバークだ」と言う声が聞こえた。早速、窪地の残雪の上にテントを張り出したが、張り終えぬうちに、強風に吹き飛ばされてしまった慌てて少し下って張りなおし、バーナーを焚いて冷え切った体を暖めた。すると、着ているものの冷たさを非常に感じて来た。バーナーで着物を乾かしながら雑談が始まった。マァ、野郎が4人暇にまかせて雑談となれば、皆さん、マァだいたい話の内容は言うまでもない。
 雨は一向に止みそうもなく、このまま降り続ければ、止むを得ないから下山、また、少しでも回復すれば、赤石小屋までつっこむと言うことになり、そうすると活動に十分な水が無いので、テントの外にコッフェル等を出して雨水を溜めておくことにし、前夜の雨でビジョビショに濡れたシュラフに入り天候の回復を祈り、眠りについた。
 寒さにたまらず目を覚ますと、さっそくバーナーに火をつけた。風雨は未だ昨夜といくらも変っておらず、残念だが下山となった。皆非常に残念そうである。食事は昨夜溜めた雨水を使用することになった。米をとぐ程水が使えないので、水の中に米を入れて、炊きあげてしまった。食事中「ア..これ何だ、葉ッパじゃねえか」「ほんとだ、味が出てうまいだろう?そのままくっちゃえ」などとけっさくなものである。
 またまた雨の中でのテント徹収。急いで下山し始めた。途中から雨は上り、何と言う山か、3,000m級と思われる大名達が2、3わずかに顔を見せてくれた。その姿が「せっかく来たのだから顔を見せてやるか」というように見えたので、「ちくしょう、ふざけやがって」と残念な気持をむき出しにして降りて来た。


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