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犬麦谷
五十嵐 雄二

山行日 1967年11月6日
メンバー (L)五十嵐、野田、鈴木

 氷川よりバスで日原鍾乳洞行に乗車、終点にて下車、日原神社を左に見て進む。スケールの大きいツバメ岩が目前に現れる。各ルートに、アリのようにブラ下がっているクライマー達。野田さんと何時の日にか登ろう、と言っていた岩である。時間が無いので犬麦へ飛ばす。犬麦谷出合まで一汗かいた。朝メシを取り出してカッ込む。
 谷に入ってすぐ暗い峡所となり、苔むした岩を伝わって行く。始めに出合ったのは幅広い二双ノ滝である。2、3mの小滝の中央を直登する。後は1時間程はたいした滝もなく、少々淋しくなって来たころ、スケールの大きな滝に出くわした。直登は無理で、高捲く。ザックの金具がきしむ。その次は、チムニー状に落ちている、かなり大きな滝である。あまり高捲くのもしゃくなので、「こいつ、一つ片付けるか」と、直登のため取りつく。所が、やっと乗越してみると、上段が4、50mもあるとてつもない滝だ。ほうほうの態で右の岩稜へ逃げる。こいつがタツマの滝だったのかと、改めて見直す。たしかにデカイ。高捲きもかなりショッパイ。岩とブッシュとの戦いだ。その先から、犬麦谷の誇るモリノ窪瀑流帯が始まる。薄暗い峡所となり、やけに悪そうだ。次から次へと小滝の連続である。小は直登、大は逃げ、時間のないのがしゃくだ。
 チョックストーンの滝を最後に、ガレになる。ここで失敗した。ガレに入る所で左側10mに稜線が見えた。ガレはかなり長そうである。野田さんが、「この先のドブ溝を歩いても始まらぬ、稜線へ上ろうぜ」後の2人も「ウンダナァー」と直登する。
 稜線までは5分。ところが先がいかん。背の倍はある笹藪だ。立って歩こうとしても、どうにもならん。腰をかがめ進む。汗と笹が衿に痛い。後は、熊よろしく四つん這いになる。泣き泣き進んで行く。
 ヘトヘトになったところで、先を行く野田さんから声あり。「出たー」林道へ首だけ出した姿、泣く人が居るでしょうに。そこでシャッター一つ。後は日原まで走りまくった。バスがありますようにと祈りながら。


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