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十枚山
播磨 忠

山行日 1968年3月3日
メンバー (L)播磨、山本(義)、鈴木

 2月18日の予定であったが、係の都合で3月3日に変更させていただきます。
 静岡駅では登山姿の人は我々3名だけであったようだが、バスの始発駅である新静岡駅へ行くと、かなりのハイカーが例を作ってバスを待っていた。我々のように東京方面から来る人は少なく、大部分が地元の人達であろう、御陰でバスは立ち通し、約1時間半ばかり満員のバスに揺られて、うんざりする頃、目的地の六郎木に到着。静岡では晴れていた空も、途中で怪しくなり、下車する頃には、遂に雨が降り出してくる。同行の二人はしきりに渋るが、天気の好転に一縷の望みをかけて登ることにする。天気予報では、こんな筈ではなかったのだが...。
 林道が終って、急になった山道が、中の段の部落にかかる頃、今まで降っていた雨が、みぞれになり、そして好転のきざしさえ見せず、前途多難を思わせる。途中食事をしたが、同行のY君は、バス停で買って来た柿の種を食べるだけ、我々にしたところで、そんなに美味い物を食べているわけではないのだが(当日はパン食)、それにしても柿の種とは、よくぞ山へ登る馬力が出るものだと感心、感心、唯、感心するばかり、蛇足ではあるが、彼は当会きっての即席ラーメン嫌いで通っている、全く気の毒な話だ。
 展望の利かない尾根道は、唯黙々と登るだけ、途中直登ルートなる道標に導かれて、地図上に無い道を登る。十枚峠を通らずに、直接山頂へ続く尾根上に、つけられた道らしい。登るに従って雪も深くなり、傾斜も増して滑りやすくなり、足手まといになると思っていたピッケルが、結構役に立った。山頂に近づくにつれて、いよいよ雪もひどくなり、風も出て来て、視界は全然利かず、このコースを選んだのは我々のパーティだけであったようだ。心細さを押えて細々とついている踏跡をたどって、やっとの思いで山頂に到着、山頂の近くで風をよけて、何パーティかが休憩をしている様子であったが、我々は記念撮影をして、早々にそこを出発、こんどは十枚峠に向かって下り始める。木の枝に雪が積って、それが丁度霧氷のように輝き、まるで白い珊瑚のように美しい、峠からは成島に下ることにした。急な尾根道を、転びつ、まろびつ、雪だるまになりながら下ると、雪も次第に少なくなり、里に出る頃には雪も消えて、梅の花がちらりほらりと咲いている。山上の冬から一足飛びに春が来たようだ。
 成島からはバスで身延線の内船駅へ出て、そこから富士駅経由で帰京。


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