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会津駒ヶ岳
小島 作蔵

山行日 1968年9月22日~24日
メンバー (L)溝越、小島

9月22日(晴)
 昨夜の満員列車と更に桧枝岐までの長いバスなど、いささかうんざりした頃ようやく駒ヶ岳登山口の滝沢橋で乗り物より解放され、穏やかな秋空の下を歩き出す。登りは急ではないが坦々と続いているのと気持ちが弛んでいるのか、疲れはいつもと変わらない(非情に疲れるということ)。時々樹々の間から吹き込む風が汗で濡れた身体に心地良い。視界の利かない山道を黙々と歩く、身体中の水分が出てしまい喉がカラカラになってヒイコラいって登る。溝越はずっと先に行ってしまったのか姿は見えない。やがてモートーの声、どうにか声のしたところまで登ると溝越が待っていた。そこが水場だった。ガソリンならぬ水を充分補給して再び駒の登りにかかる。やがて樹林帯を抜け出し、ぐっとロマンチックな景色の田代に出、視界がばっちり利くようになる。遥か前方に駒の小屋、そして右手になだらかなスロープが続き、その先に駒の頂上が望まれる。
 今日の仕事の見通しがついたのでばっとり休むことにする。もう紅葉が始まり緑の中に紅、黄と彩も綺麗な山裾を眺める。辺りも暮れ色が濃くなってきたので重い腰を持ち上げ田代道を歩く。まるでゴルフ場を歩くような気分である。こんな所をナニと二人連れだったら良いだろうなと思いながら(現実は全く違う)駒の小屋へ入った。小さな池を前にした良い場所に小屋は建っている。

9月23日(曇)
 明日、平ヶ岳に登る都合があるので今日はできるだけ稼ごうと少々早起きする。昨夜のウィスキーでよく眠れたのか気分が良い。出発前に駒の頂上を往復し、御池に向かって出発する。天気があまり良くないのでがっかりする。しかし、道はなだらかな下り道、そして時々池もある。良い山道である(くどいようだけどナニと二人連れならゼッタイの所である)。大津岐峠を過ぎる頃は全くのガス、ガスの中を大杉岳を越し御池に到着した。そこで早目の昼食を摂り、平ヶ岳入口に向かって歩き出す。十九曲りを過ぎ林の中の静かな道をただひたすら歩く、天気は相変わらず悪い。やがて山道を過ぎ平坦な広い道に出、尾瀬口山荘に到着した。時間はP.M2時である。ガスが低く垂れこめ、ラジオの天気予報も台風が近づいて天候悪化とのこと、しばらく思案したが結局平ヶ岳は止めることにし、今日はこの山荘に泊ることに決定。時間もあるので釣竿を借り、釣りに出かけるが魚影はあるのに全くひかず、従って一匹も釣れなかった。

9月24日(曇)
 朝起きて窓より空を見上げると、天候悪化どころか昨日より好天である。平ヶ岳頂上と思われる所は青空さえ見えているではないか、完全に不貞腐れた。バッチリ朝食をいただく。昨夜お櫃を空にしたので、朝食にしては沢山飯が入っていた。今日の仕事は船着場までなのでのんびりと歩く。途中、通学途中の部落子供達と遭う。どの子も皆同じような顔に見える。山荘を出て2ピッチで船着場に到着、船を待つ間時間があり過ぎるので、針金で釣り針を作り、古いゴザの糸を解き釣り糸にして、またまた釣りを始める。魚はピョンピョン跳ねているのにこれまたエサ(ミミズ)を全く食わず、従って昨日と同様釣りもダメ、天気には裏切られる、魚には馬鹿にされる、踏んだり蹴ったりアタマにカリカリときた。
 やがて船が来たので湖を渡り、バスにて小出に出て帰京した。


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