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白根山から皇海山縦走
野田 昇秀

山行日 1969年9月14日~16日
メンバー 野田、鈴木、小池

9月14日
 前白根山への道はスキー場のリフトに沿って登る、緩やかな斜面を見ては一言、急斜面を見ては一言、雪のないのを幸に盛んにスキー談義が弾む。やがて白根沢に入りすぐ右側の尾根に取付くと急登がしばらく続く、久しぶりに担ぐキスリングに悲鳴を上げながら、汗をかきかきやっとの思いで前白根山に辿り着いた。眼前の大きな白根山、美しい五色沼にみとれていた。私達の登る錫ヶ岳から宿堂坊山の山脈は、白根山に比べるとあまりにも貧弱である。しかしながらその小さな山の中に白根山よりも大きな楽しみと、未知が隠れていようとは私達以外の人に解ってもらえようか。とか何とかえらそうな事を言って避難小屋の分岐で白根山登山道から分れると、道は国道から畦道に変る。登山者もいなくなって楽しみどころか寂しさいっぱいである。白根隠北峰、本峰、西峰と小さなピークを上下して行くが期待の藪はまだ始まらず、小笹の中につけられた道を靴みがきだと言いながらさらさらと音をたてながら歩く。時々コケモモの実を口に入れながら。
 錫の水場は小さな鞍部にあった。水場まで下ってジュースで喉を潤す。
 錫ヶ岳の登りは振り返ると白根山が見える楽しい登りでした。苦しくなると立ちどまって白根山を眺めまたゆっくりと登って行きました。山頂に着くと生憎のガス、晴れるのを待って1時間程休んでから柳沢の水場へ下った。いよいよ悪路の始まりであった。藪の始まりであった。倒木はいたる所に転がり、藪は道を隠していた。疲労した私に時々睡魔が襲い気が緩んだ途端に倒木がいやと言う程足をたたく。藪め、倒木め、と不平を言いながら急坂を下った。小ピークを越して樹林の中に入ると指導標があり、柳沢の水場はすぐでした。幕営。例によって酒を飲む。

9月15日
 幕営地から登山道に出ると昨日より悪い道が待っていた。倒木を跨いだり、潜ったり藪漕ぎをしたりしながら、シラビの枯木の目だつ三林班沢の頭に着く。中禅寺湖、戦場ヶ原が左側に美しく見えました。後には、錫ヶ岳、白根山と続く山々を写真に収めてから笹の中に入って行く、笹の中を平泳ぎで進と宿堂坊山である。樹林に囲まれた、やや広いピークである。ここから三俣山までの間は笹の密集地帯である。平泳ぎもやがて潜水泳法に変った。潜水時間が永くなるに従って、私は大バテ、藪漕ぎの名人鈴木君も、かなりこの藪は堪えたようだ、黒檜山、社山への道を左に見送るとすぐ三俣山山頂である。朝からの藪漕ぎ(全身運動)で疲労が激しく日向山の水場で今日は幕営することに決め、ゆっくりと休む。カマ五峰の岩峰を左に見て噴火口の縁を通り、白樺の林の中の道を通ると、今までの藪山とは全くイメージの違う別天地日向山の水場に着きました。ナナカマドの赤と砂の白と、草の緑が非常に美しい場所でした。日向山の先には皇海山と鋸山が大きく立ちはだかっていた。今日は例の酒はない。ラジオを聞きながら淋しく寝る。

9月16日
 出発の時になって雨が降り出す。日向山を越えて国境平に出る時には既に、雨に濡れた笹道を歩いた為全身びっしょり。松木沢を下る事を考えたが、また藪こぎに来る気にもならず、強引に皇海山へ進む。縦走を完成させなければまた藪こぎに来なければならない、その気持がどしゃぶりの中を皇海山へ登る偽りのない気持でした。藪のなくなった樹林の中2ピッチで頂上へ。記念写真を撮ってからすぐ鋸山へ向う。鋸山の手前はかなりの急登でした。やっとの思いでピークに立つと雲が切れて松木沢を見る事が出来た。右に六林班への道を分け、鋸の名の通り小ピークを七つ程をたん念に上下するとやっと庚申山に着きました。庚申山荘までは妙義の石門を思わせるような、奇岩、巨岩の多い所でした。
 山荘の前で衣類を脱いで全部絞る。まだ降り続いている雨、まだ濡れなければならない。快適な下りから六林班の林道に出ると、庚申川に沿って小1時間で銀山平のかじか山荘に着いた。バス停で発車時間を見ると、さあ大変、バスの運行はない。夏の間だけ運行されるのであろうか。それとも小滝銅山が閉鎖された為であろうか。理由はともかく、急ぎ足でまた歩かなければならなかった。疲れた。

〈コースタイム〉
9/14 湯元(7:05) → 前白根(10:15) → 錫の水場(13:00) → 錫ヶ岳(14:10) → 柳沢の水場(16:10)
9/15 柳沢の水場(6:50) → 宿堂坊山(9:10) → 三俣山(12:30) → 日向山の水場(14:45)
9/16 日向山の水場(6:20) → 皇海山(8:15) → 鋸山(9:15) → 庚申山(10:55) → 庚申山荘(11:35) → かじか荘(13:20) → 切幹(14:25) → バス5分で通洞駅へ

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