山行日 1970年5月24日
メンバー 原口
冷気が感じられる松井田に降り、係は、参加者は、と寝ぼけまなこで一人一人の顔を見渡したが、知った顔の人は見当らず、ままよと買求めた地図で行先を決めなければならなかった。夜歩くとは思わず懐電も用意せずに来たので、心細いことおびただしい。
駅前から陸橋の上に出て左へ、しばらくすると四つ辻になる。ここから右方に舗装道路は妙義まで一本道である。月もなく、薄ぼんやりと白く浮かぶ路が頼りだ。電燈が所々と数少なく、前方にどっしりと黒く見えるのが妙義であろうか。体が汗ばみ始める項、鳥居が眼前にあり、そこを一息に階段を神社まで登ってしまった。
妙義神社の神殿の前の案内図には右と、左のどちらをとっても行けるようなので、比較的楽な左を取ることにした。5、6人の人達と一緒に、杉木立の中を歩くと、墓のある所へ出てしまった。これは間違えたと逆戻りして途中の道へ入る。
夜が白み、新緑の間から陽がもれ、心地よい思いがする。前日までの雨が、汚れを払い落とし清々しい。第二展望台まで来て、道が下方に向っている。ここで、また間違いに気づく。かなりのアルバイトをしてしまった。他のパーティも一緒なので、お互いに慰め合いながら、神社まで帰らなければならなかった。
神社の神殿の前を沢沿いに登ると、指導標がしっかりついている。かなり急な登りを強いられると大の字である。右へ廻り込むと奥の院で、仏様が梯子段の上の奥の方でこっちを睨んでいた。女の子達が鎖場でキャッキャッ騒ぎながら、鎖にぶら下っているのでここで小休止。ここを登り、しばらく行くと稜線に達する。空は澄み、松井田の家々が手に取るようにわかる。遠くに浅間山、近くには裏妙義の絶壁の美しい眺めが素晴しい。しばらく進むと針金の付いた岩場があって、この辺りはかなりの高度感があり、白雲山の頂へ導かれる。稜線伝いに天狗岳に着く頃には、あらかたのパーティを抜いてしまった。この下りには岩場があって鎖が付いている。天狗岳を見ると百数十mの絶壁がそそり立っていて見事なものである。ここまで来る間には、そこかしこにつつじの赤や白の花が咲き誇っていた。時間はあまりかからないが、相馬岳へはかなりの登り下りの連続である。途中から他の二組のパーティと一緒になり、励まし合いながら行動を共にし、最後まで下った。
相馬岳から縦走路は真すぐに下る。下り切ってから少し登った所がホッキリで、風が気持よく吹いてくる所である。しばらく縦走路を登って行くと踏跡が幾筋もあって迷ってしまった。しばらくすると反対の方から来た人も迷って来たのでお互いに道を教えあって、バラ尾根に取り付いた。やがて何ヶ所も鎖のある岩場があるが、ここが鷹戻しで、途中に鎖のないヤセ尾根もあり、下は真すぐに切れていて、スリル満点である。
石門や大砲岩に人が豆粒のように見え、正面には金鶏山が周遊道路によって囲まれている。金洞山には、途中2ヶ所の鎖場を通った。頂上にはハイカーが群がって座る場所もない程で早々に下る事にする。見晴より急坂を中ノ岳神社へと、歩き良い下降路であった。
神社からバス停の四ツ家まで、時間があるのでのんびりと歩き、バスで下仁田までゆられ今日の静かな山行を終了した。