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冬山合宿 北八ヶ岳
川田 昭一

山行日 1970年12月31日~1971年1月3日
メンバー 川田、播磨、鈴木、山本(義)

12月31日
 茅野駅から奥蓼科行の一番バス(6時35分)に乗る。新宿を出る時降っていた雨もここでは雪となり、冬山という厳しい自然の舞合に入って行く為の、プロローグのようにさえも感じる。終点の奥蓼科(渋の湯)には8時に着く。年に以合わぬ声で客に接待をする婆さんの所で朝食を摂り、今日のテント場である黒百合平への最初の登りが始まる。登り始めると、キスリングの重みが殊更感じられる。こんな辛い状態がいつまでも続くのだろうかと、余計に足の運びが悪くなるので考えない事にし、黙々と高度を稼ぐ。登り始めてから3時間、今までの針葉樹の林が突然切れて、盆地状の雪に覆われた今夜のテント場である黒百合平に着いた。熱い紅茶を飲み、夕飯支度まで話に花を咲かす。
 夕食の材料にと、テントの傍の雪の中に埋めてあった豚肉、牛肉を小屋で飼っている犬に持っていかれ、「献立、大いに狂う」、例えば、酢豚が酢ハム、豚汁が豚ぬき汁となる。

1月1日
 6時起床、快晴。元旦にふさわしい気持の良い朝だ。中山側にある樹林帯に日の光が照り、濃い橙色を作り光り輝いていた。10時。テント場出発、荷が減ったので昨日程の肩の食い込みは無い。諏訪側から吹く風がかなり強く、風が当る部分が冷され、左手と右手の冷たさがはっきり感じられる。中山峠には出ず、天狗の奥庭を廻って東天狗、真下の岩稜を詰め、東天狗ピークに11時45分に着く。南八ヶ岳連山は勿論、北アルプス穂高連山、槍、表銀座の連山が眺められる。後立連山は雲がかかって視界に入らず。また南アルプス北部、中央アルプスが手に取るように見える。兎に角360度大展望だ。荷を置いて西天狗ヘピストンする。東天狗の縦走路から根石岳、ミカブリ山と二つの小さなピークを越して、2日目の幕営地夏沢峠に着く。2日目の楽しいテント生活が始まる。

1月2日
 起床6時。昨日の快晴とは打って変わりガスっている。時折、硫黄岳北面の火口壁が、ガスの切れ間を縫って見られる。風はあまり吹いていない状態である。2、3時間後から風が吹き出し視界を閉じていたガスが吹き飛ばされ、硫黄岳ピーク辺りから日の光が当たり出し、誘われるようにBCを後にサブで硫黄岳を往復する。2時間ばかりの空身での往復だったが強い風に当てられ、体力が大分落ち、冬山の厳しさを体で感じた。もっと完全な防寒衣を工夫してみたいと思った。その日のうちに夏沢峠から本沢温泉に下り、硫黄、夏沢峠、天狗、中山等変化のある稜線を一望出来るミドリ池を経て、稲子湯に降りる。稲子湯でイナゴの佃煮が一番美味しかった。

〈コースタイム〉
12/31 渋の湯(9:10) → 分岐(10:55~11:15) → 黒百合平(12:00)
1/1 黒百合平(10:00) → 東天狗岳(11:45~13:03) → ミカブリ山(14:00~14:15) → 夏沢峠BC(14:30)
1/2 BC(11:00) → 硫黄岳ピーク(11:50) → BC(12:20~13:35) → 本沢温泉(14:05) → ミドリ池(15:15~15:25) → 林道分岐(15:55) → 稲子湯(16:25)
1/3 バスで小海駅へ

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