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奥多摩浅間尾根
播磨 忠

山行日 1971年2月28日
メンバー 播磨、山本(義)、鈴木、境

 小河内神社でバスを降り脇の店で朝食を摂る。奥多摩湖の水は渇水期のせいもあるが大分少ない。短くなったドラム缶の橋の上では寒風に晒されながらワカサギでも釣っているのであろうか、釣人が鈴なりである。その間を縫うようにして対岸に渡る。
 対岸に渡ってから工事中の観光道路に這い上がるのであるが、取付きの道があまり良くない。道路さえ作ってしまえば登山道などはどうでも良いという考えなのであろうか、車優先の行政がこんなところにも表れている。観光開発という大義名分を振りかざして、自然を荒らすのは何ともやり切れない。交通が便利になって遠くまで容易に行けるのは結構だが、それにも限度があると思うのだが。
 道路から降りて昔の沢沿いの登山道に入る。少し登った一軒家(無人)の所から道標に従って風張峠への道に入る。天気は少々下り坂に向かっているとのこと。しかし現在は申し分なく晴れ渡り、高度を稼ぐごとに背後の鷹ノ巣山から七ツ石山へと続く石尾根が競り上がってくる。下に眼を転ずれば奥多摩湖の水が空の青さを映して青く光っている。
 突然、尾根道が例の道路に断ち切られ、無残にも山肌が削られている。また邪魔されたか畜生、やっとの思いで削られた山肌を登って元の登山道へ出る。背後からヘルメットのあんちゃんが「ここは工事現場だ、立ち入り禁止だぞ!」と怒鳴っていたが、糞喰らえだ!
 この辺りから雪を見るようになるが大したこともなく、少々時間を費やしたが風張峠着、時計を見ると1時少し過ぎ、出発が遅かったせいもあるが大分遅れたようだ。
 ここでラーメンを作って食べているうちに空模様が少々おかしくなり、予報通り薄雲が広がってきた。時間的な都合で小河内峠方面へ下ろうかとも思ったが、そのまま浅間尾根に入る。すぐ左の下の方で例の道路工事であろうか、ブルのエンジンの音がする。少し下った所でまたもや道路が尾根を横切っている。ここは大分深い切通しになっており、登山道はそのまま断崖絶壁となっており道路へ降りることは出来ない。仕方なく少々戻って植林帯を木に掴まりながら道路へ降りる。ここは対岸へ渡るという形容がピッタリするほど、尾根が無残に切り取られていた。全く無残である。
 今日は浅間嶺を経て本宿まで行く予定であったが、道路工事で気分が壊れたのと時間的に無理なので、途中から数馬下へ下った。バスの時間を知らなかったので我々が着いたらバスが出たばかり、そのあとのバスは2時間も待たなければならないと判り、トラックに乗せてもらい、吹きさらしの荷台で寒さと埃に悩まされながら五日市に向かった。
 現在工事中の道路は数馬辺りから一旦浅間尾根を越えて北秋川側へ入り、月夜見山の山腹を絡みながら、主稜線を越えて多摩川側へ通じるらしいのだが、この浅間尾根コースはこの道路とクロスしている所が多いので、今後興味は半減することであろう。


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