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白山
原口 藤雄

山行日 1971年8月10日~12日
メンバー 原口、鈴木、山本、三橋、松本

8月10日
 夏山合宿の一行と泊駅で別れ、一路金沢へ向かった。金沢の駅から白山下までは北陸鉄道の始発である野町の駅までバスで行き、そこに荷物を置いた。時間があるので兼六園を観にいこうとタクシーに乗ったのであるが、東京の田舎者とされたのか1台のタクシーは遠廻りをさせられ、高料金をとられたとのことでした。兼六園は日本三名園の一つではあるが造園の妙は見事でした。入場料は無料、見物はそこそこに、はぐれた仲間を見つけねばならないトラブルや、昼食をしなければ、さりとてこれから3日間の食料を買いに行く必要もあった。20分で買い物を済まし、駅まで夕クシーで飛ばしてやっと間に合い電車の人となった。
 白山下まで1時間10分、さてバスはと時刻表を見たが、別当谷出合行は朝の7時のみしかない。2時過ぎたというのになんと調子の悪いことか。それではここに泊るしかないとの結論になり、近くの学校の校庭をと思ったが学校の中の方が良いとのことで、先生が区長さんの所へ交渉に行って、講堂を拝惜、おまけに近くの畑で作業をしていた農家の方からモロコシまでいただいて来た。楽しい食卓を囲んで食事が出来る。小さな幸せを味わった一日でした。

8月11日
 今日も晴。バスは定刻発車。手取峡谷に沿って、桑島温泉、白峰、白山温泉を経由、柳谷の川べりを登って別当谷の出合へ着いた。出合からは吊橋を渡り、山腹を進むが、かなり暑い。しばらくして林道を進み、冷たい水のある所で少休止。我々のような大きな荷物を担ぐ者は少なく、また老人や5才くらいの子供までが登って行くというバラエティに富んでいる。2時間も登ると、立派な甚之助谷ヒュッテに着く。ヒュッテから50メートルばかりの所で右へ平行に南竜ヶ馬場ヒュッテに到着。天幕場は団地の如く整地され、縄で囲われ、下には板を敷くようになっている。白山でのテント場はここだけで、良く整備されている。ラーメンを食べ、時間があるので、三橋、松本さんの3人でアルプス展望コースをと、草原の水の流れを幾つか渡り、這松の間をしばらく登ると展望台に着く。下方には青々とした白水湖が見え、その向うには地肌も荒々しい三方崩山が眺められる。ハクサンフウロ、シオガマ、クロユリ等、高山植物の群落が夏の名残りの如く咲いている。大きな雪渓の上を進むと室堂があり、人が群れている。下りはお花畑コースをとり、我々のテントを眺めながら2時間程の散歩を楽しんだ。

8月12日
 空は青々と雲一つない好天である。ヒュッテの横の南縦走コースを取ることにし、御前坂の登りを一汗かき、大きな岩の所で小休止。這松のなだらかな登りを過ぎると室堂である。鳥居を潜り約40分の登りである。頂上の眺めは素晴らしいものである。剣、立山から延々と槍ヶ岳、穂高までの北アルプス、乗鞍、御岳山と指呼の間に在り、日本海の海岸線も良く見える。2週間前に行方不明になった人の捜索をトランシーバーで連絡し合っていた。西の方へ尾根を下ると、火口湖の千蛇ヶ池、紺屋池、血の池、翠が池を廻り、北縦走コースの道と別れ、ガレ場を登り切ると大汝蜂である。ここで白山頂上付近の眺めにサヨナラをして西の方の四場山目指して這松の間をドンドン降りる。雪渓の頭が釈迦新道との別れ道で標柱がある。四塚山へはモンチャンのみで、我々は手前を右へ降りる。この付近を北竜ヶ馬場という所で感じが良い。清浄ヶ原ヒュッテは倒れ果てていた。右下方には地嶽谷のガレが見える。分岐から2時間半程で薬師山のピークへ達する。頂上からは北縦走の登山が眺められる場であるが、草いきれのする暑苦るしい所である。これから長い長い降りが続いて、這松地帯から森林地帯へと移り、コエト小屋跡を越え、更に2時間もジグザグの繰り返しで、はるか下の木の間を通して岩間温泉の赤い屋根が見えてきた。谷川へ降りきった所が岩間温泉元湯で、ヒュッテは立派なもので、無人ときているから大変素晴らしい。川原を適当に堀り、そこの天然浴槽に下山の汗を洗い流したのも、地元の人連が酒をめぐんでくれた楽しい語り合いも思い出深いものとなった。
 翌朝、食事を済ませ、地元で世界一と自慢する特別天然記念物の噴泉塔群の奇観の見物に出かけた。岩の間から高く噴上げる数条の噴泉、噴出物が固着した黄色い美しい岩の色、地熱で地面は熱く感じられる。雨が強く降る中をモンチャン達は吊橋を渡るコースをとりヨッチャンと私は元来た道を引き返す。我々の方が先に着き、温泉で体を温める。結好なものでした。
 岩間温泉までは中の川の左岸の高い道を1時間半程で新岩間温泉まで降った。バスは一日3本しかなく、どうせ夜行になるのならと、ここに泊ることを交渉。ゆっくり温泉に浸かり、トランプに興じ、岩魚の骨酒というのを向いの部屋の人から差し入れられた。熊や猪、猿の話を聞きながら、夜のとばりは降りていった。翌朝、中型バスで白山下駅へ下ったのでした。


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