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冬山合宿 甲斐駒ヶ岳
川田 昭一

山行日 1971年12月29日~1972年1月3日
メンバー (L)川田、山本、溝越、鈴木(嶽)、播磨、杉原、松本、今村

 1月2日、昨日の前線が通過して季節風の吹き出しが始まったのか、BCから小仙丈の稜線を見上げると雪煙が舞い上がっているのが見られる。今日は北沢から駒への往復だ。仙水峠、小松峰へと順調に登る。小松峰と駒とのコルで休む。我々の休んだ背後から吹き出しの風が吹きつけ、その風で舞い上がった雪へ日の光が当たり、その照り返しがキラキラと光り輝く。「これが雪花だ」と播磨さんが言う。我々は自然が作り出したこの美しい現象に見とれていた。こんな訳でここのコルで30分の休みを取り、駒に向けて登り出す。途中何組かのパーティとすれ違いながら駒のピークに向かうがなかなか高度は稼げない。ピーク直下の登りでは、杉原さん根性で登り詰める。登り詰めた駒のピークからの視界はあまり見通しが利かず皆がっかりする。誰かが「冬山でこれだけの視界、いい方だよ」と言う。ピーク上の平らな所にどこかのパーティがテントを張っていた。こんな所で風に吹かれたらさぞ強いのが当たるだろうと思ったら、コルを吹き抜ける風の方がもっと強いそうであると、誰かが言う。頂上には15分くらい居てすぐ下り始める。天気は相変わらず悪く気温はかなり下がってきている。ピークから一気に仙水峠まで下る。仙水峠のコルで案の定、強い風に吹かれる。テントに入って温かい物が食いたい、このことを頭に浮かべながら足早に下った。

アサヨ峰往復
鈴木 嶽雄

1月3日
播磨、川田、鈴木

 吹き荒れた一夜が明けた。アイゼンを付け、冷たく痺れる足で仙水峠への道を登る。沢沿いから針葉樹林帯を抜け、峠が近づくと風が吹き出す。振り返ると仙丈岳がモルゲンロートに染まっていた。仙水峠から見る甲斐駒ヶ岳摩利支天の雪と岩の大きな岩壁が朝の光に輝いている。その上に青空が大きく広がっていた。
 峠から右に樹林帯を登る。しばらく登ると風が一段と強くなり、クラストした斜面となる。これが栗沢の頭まで一直線に続く。強風のために何度も吹き飛ばされそうになりながら登る。
 我々は好むと好まざるとに拘わらず山頂に立つことのために、大きな自然に立ち向かわねばならない。ここが冬山の勝負の世界だ。一歩一歩登る足、握るピッケルに力が入る。周囲の山々もグングン競り上がってくる。ようやく栗沢の頭の頂きに立った。
 南北アルプスを始めとする山々が雲一つない青空に顔を出して、今までの苦労が報われた。更に今から行くアサヨ峰のクラストした稜線は逆光でキラキラ美しく輝いていた。
 ここからは野呂川から吹き上げる強風を顔に受けながら小さなコブを登り降りしながら進む。アサヨ峰の直下は物凄い風で雪面に一回一回ピッケルを突き刺し、風の合間を縫って頂上に立った。
 強風のためか引きつった顔からは喜びを感じる余裕はなかった。冬山なんて登っている時は意外とこんなもんだ。ただ富士山の右に伊豆半島が黒々と見え駿河湾が黄金色に美しく輝いて見えた。冬山に登って周囲の白黒の山々を見慣れたせいか、あまりにも別世界のせいか実に美しかった。
 早々に元来た道を引き返す。足取りも大分重い。栗沢の頭から下る頃は朝よりも大分風も弱まっていた。
 クラストした雪面はアイゼンが快く利いて冬山の喜びが体全体に返ってきた。あの白い峰々も針葉樹の中に消えていった。

冬山合宿の食料計画
川田 昭一
12/29 駅弁
行動食 パン
いなりずし
ボンカレー(人参、玉ねぎ)
福神漬け
12/30 味噌汁(長ネギ)
漬物
行動食 パン
チーズ
甘納豆
みかん
缶詰弁当
コーンスープ
野菜炒め(玉ねぎ、ピーマン)
12/31 味噌汁(ほうれん草)
漬物
行動食 みかん
甘納豆
ラーメン
鱈ちり(鱈、春菊、長ネギ、白菜、味噌、人参)
缶詰弁当
1/1 雑煮
おせち料理
白菜
漬物
行動食 チーズ
みかん
パン
甘納豆
汁粉
すき焼き(牛肉、焼き豆腐、白菜、長ネギ、春菊、しらたき)
1/2 雑煮
漬物
行動食 パン
ラーメン
チーズ
ジャム
羊羹
甘納豆
なめこ汁
漬物
野菜炒め(ピーマン、玉ねぎ)
1/3 味噌汁(わかめ)

漬物
行動食 ラーメン
パン
はちみつ
みかん

 以上が冬山合宿の食料計画であったが、この他に予備食料としてラーメン10個、つまみ等が豊富であった。また、例に漏れなくアルコール類も今回は特に豊富であった。


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