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夏山合宿 薬師岳~笠ヶ岳縦走
別所 三郎

山行日 1972年8月5日~9日
メンバー 長久、小島、播磨、山本(義)、鈴木(嶽)、別所、永田、中川、春原、松本

8月5日
 朝、富山駅で永田君が加わり、女性3名を含む9名で折立より縦走は始まった。
 調子の出ない急登行を強いて1時間半、1800mの三角点に着いた。そこは本日、有峰口よりバスに乗って来た人々が必ず休む所で、混雑していた。三角点から太郎小屋までは、高原状の尾根道を3時間の行程で夏晴れの日照りの下汗を拭き拭き歩いた。太郎小屋付近では天幕を張れずそこから20分の薬師峠キャンプ指定地に幕営することにした。蛇口の付いた水道のあるキャンプ地にはすでに2、30張のテントが張ってあり賑やかだった。夜は心岳山岳会との交流をもち、花火を上げ寄附されたブランデーに舌鼓を打った。

8月6日
 早起し、空身の快適さでお花畑の連続する道を登り薬師山頂は朝日が真横から当る頃休んだ。長久さんの解説入りで北は北海道南は沖縄までと言いたいような大展望を満喫した。再び薬師岳に戻ると永田君から予定通り折立に下るとの書置を読み天幕を徹収し北股に向ったのは9時だった。だらだらした登りの北股岳を越して中俣乗越までは時々ガスったりしたが黒部五郎への斜面に取りつく頃は安定して夏山特有の空模様になった。高校山岳部のしごき場面を横目で見ながし、五郎の登りは苦しかったが40分ぐらいで鞍部に着いた。鞍部より荷を置いて五郎頂上を往復した。そこから約1時間五郎のカール内にあるキャンプ指定地に着いた。豊富に流れる水、岩と残雪抜けるような夏の空と緑の這松群、そこは美しい所だった。

8月7日
 その日の行程はわりあい楽とのことで朝は6時半の遅立ちだった。テクテク取りあえず五郎小屋まで下って150円なるコーラを飲み、三俣蓮華への長い登りに向った。稜線に出ると風があり汗が冷えて寒かった。10時頃三俣山頂に着く。昨日の薬師が大きい。山頂直下の鷲羽岳と双六の分岐にて長久さんに荷物番を頼み、三俣小屋を経て鷲羽岳往復をした。空身にもかかわらず疲れが出たのか歩速が遅く霧の中傘をさして待っててくれた長久さんに逢うまで3時間もかかった。
 しかしその後は調子をもどし登り下りのない道を双六岳を巻いて歩き、双六小屋とキャンプ場を見下す地点からは、来ているはずのモンチャンのテントを捜し当てコールを送りつつ双六キャンプ場へ3時半に着き本日はこれまでとした。赤牛水晶と抜けて来たモンチャンは朝10時には既に双六に着いていて待ちくたびれて彼の変形テントの中で眠っていた。その夜は長久さんの知人のやっいる双六小屋よりビールを購入し何日ぶりかで人と語り合える嬉びにモンチャンが乗って、会の事から政治まで、途中性能の良いトランジスターからのラテン音楽に耳を傾むけるなど結構騒がしかった。夜空は星がバッチリだった。

8月8日
 森林帯の等高な道を約1時間穂高が眼前に迫る大ヌマ乗越に出る。今日下る播磨を見送り一汗して秩父平に出る。水場は20m下った所にあり小じんまりしたキャンプ地になっていた。そこから稜線まではわずかで涼しい風に素晴しい展望の尾根道が笠まで続いでいた。カタカタと音がする石だらけの斜面を登ると所狭しと積んだケルンの中に笠の三角点はあり、ちょうど正午。カンカン照りの下で昼食を済ませた。ここを下りさえすれば山行は終り、下り着く所は温泉で、山菜料理、冷えたビールが待っていると思えばこそ、ガクガクのヒザに鞭打って下りに下った笠の大下りだった。夕方6時樹林帯より車道に出るとそこが槍見温泉旅館で本縦走の終点であった。

〈コースタイム〉
8/5 折立(11:25) → 三角点(12:00~12:55) → 太郎平小屋(15:30) → 薬師峠キャンプ場(16:00)
8/6 薬師峠キャンプ場(4:30) → 薬師岳山頂(6:20~6:55) → 薬師峠キャンプ場(7:55~9:10) → 北股岳(11:20) → 中俣乗越(12:35~13:40) → 黒部五郎鞍部(15:00) → 黒部五郎岳(15:30~15:55) → 黒部五郎キャンプ場(16:40)
8/7 黒部五郎キャンプ場(6:35) → 三俣蓮華岳(9:40~10:25) → 鷲羽岳(10:48~13:30) → 双六キャンプ場(15:35)
8/8 双六キャンプ場(5:30) → 大ノマ乗越(6:35~7:05) → 秩父平(8:15~8:55) → 笠ヶ岳(11:45~12:40) → 雷鳥岩(13:53) → クリヤ橋(17:20) → 槍見温泉(18:00)

夏山合宿 食糧計画
播磨 忠
8/5 各自持参
キューリと鯖の水煮のサンドイッチ
メロン
ベーコンのシチュー
キューリとわかめの酢の物
米飯
8/6 混ぜご飯
味噌汁
漬物
玉ねぎの薄切りと鰹節掛け
サンドイッチ
ソーメン
天ぷら
8/7 ソーメンのおじや
茄子とピーマンの油いため
漬物
ホットケーキミックスの油揚げ
フランスパン
米飯
椎茸と切り干し大根と高野豆腐のふくめ煮
マカロニサラダ
8/8 米飯
味噌汁
マカロニサラダ(昨日の残り)
漬物
フランスパン

 その他、非常食としてラーメン若干その他、また食後にはコーヒーを用意したが紅茶を用意しなかったのでその点も注意したい。アルコールの消費量は行動がきつかったためと酒豪が少なかったせいか意外と少なかった。

夏山合宿を省みて
播磨 忠

 今年の合宿は先ず第一に天気に恵まれたことを挙げねばならない。合宿の成否は(特に今回のような縦走の場合)天気の良し悪しに大きく左右されるからだ。その点では大いに恵まれていたと思う。また、その好天にもまして一人の故障者も出ず、予定の縦走を全て完了したことは一応の成功だったと思う。
 今年も昨年同様北アルプスを選んだのだが昨年よりも今年の計画の方がよりハードだったと思う。コースタイムの計算では、1日15時間も行動しなければならないような日もあった(実際には12時間余)。しかし、昨年の合宿とは違って北アルプスではコースもしっかり整備され時間の目安も立てやすいのでその点では非常に楽であったと思う。
 また、装備の点で大テントを持っていったのだが、合宿のように同じ屋根の下で寝て、同じ釜の飯を食べ、会員相互の親睦を高めるための山行に、また居住性を考えた場合に重いというマイナスを差し引いても非常に役に立ったと思うのだが。
 何はともあれ、長久さんという大先輩も参加され、最終日には温泉も用意されて、天気も良く食料もまあまだったし先ずは大成功というところでしょうか。


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