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浅草岳
播磨 忠

山行日 1972年10月15日
メンバー 播磨、川田、別所、庭野、中川、他1名

 只見線の田子倉駅は、六十里越トンネルを出るとすぐである。
 只見線が昨年(昭和46年)に全通してから、浅草岳への登山が大変便利になった。すなわち今まで大白川の駅より長い林道歩きのアプローチを必要としたのが、田子倉駅の設置により只見尾根ヘダイレクトに取りつくことが出来るようになったのである。
 越後側の狭い谷間を走っていた列車が、長い六十里越トンネルを出ると、突然眼前に広々とした田子倉湖が広がる、越後側では晴れていた天気が、ここでは一面の霧である。
 田子倉駅は駅とは名ばかりの駅で、もちろん無人駅であるから、出札口も改札口もなく車掌が降りて一人一人の切符を受け取る、駅の前は国道が通っているが、人家、店等は一切なく、乗降客のほとんどは釣人と、登山客だけのようだ。
 湖で何人かが釣糸をたれているのを横目で見ながら、国道を少しトンネルの方へ戻り浅草岳登山道へ入る。登山道へ入るとすぐ登山届を書く場所があり、我々もそれに記入していよいよ登り始める。
 只見沢の沢身から灘れて少々登り、やがて小さな尾根を乗越して少し下ると、只見沢に注ぐ幽ノ倉沢を渡るとすぐ只見尾根の急登が始まる。登山道は大変良く、幅の広い立派な道だ。
 森林帯の苦しい登りに一汗かいたころ、朝からの霧も晴れ、眼前にはこれから登る只見尾根の先に、なだらかな山容の浅草岳が望まれる。左側には只見川の深い谷を隔てて、荒々しい岩壁を聳てた鬼ガ面山が迫ってくる。後を振り返えれば、田子倉湖と会津の山々の果てしない広がりが続く。右側は幽ノ倉沢が幾つかの滝を懸けて浅早岳へつき上げている。紅葉も今が一番見頃で、天気も申し分なく晴れ渡っている。全く本日は幸運である。只見尾根はかなり急登ではあるが、登山道が大変うまく作られているせいか、あまりきびしい感じは受けない。山頂まで3ピッチで快調に登ることが出来た。
 山頂附近はキツネ色の力ヤトが広がり、その上で三々五々人々が休んでいた。頂上からの展望は申し分なく、何といっても守門岳が立派で、鬼ガ面山の向うには毛猛の山々、未丈、また思い出の越後駒、中の岳、それに続く兎岳、平ヶ岳、荒沢岳、遠く燧岳の双耳峰、日光白根、なだらかな山容の会津駒ヶ岳その他奥会津の山々、そして東北の山々等、360度の飽くことなき大展望である。
 山頂では途中で採ってきた、傘の開いた大きなナメコをラーメンに入れて食べたが、大変おいしかった。今頃の季節はこのあたりの山では、大変キノコが採れるそうで、大勢の人が・キノコ狩りに入山していた。
 下山路はカヘヨボッチから、桜ゾネを五味沢へ下った。下る途中右側の白崩沢上部の高原状の所が、大変ゆるやかな斜面で、この辺りの豪雪地帯ではスキーをするには良いだろうなと話しながら下ったが、地元の人の話しでは、ここ何年かのうちにはこの辺り一帯もスキー場になるとの事です。その時にはもう一度来てみようかな(もちろん、スキーをすべれる様に練習してですよ!)。
 五味沢部落の音松荘で、鱒で軽く一パイやりながら休けいして、そこからマイクロバスで大白川の駅へ出ました。そして今日一日の恵み多い山行を終ったのです。


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