トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ218号目次

北岳偵察
稲田 竹志

山行日 1972年9月23日~24日
メンバー 川田、別所、山本、庭野、播磨、稲田

 どこかへ連れて行ってもらえないかと思い播磨さんに連絡したら、冬山合宿の偵察の目的で北岳へ行くとのこと、ついてる。何と今夜出発であった。早速支度して新宿駅に着いたら登山者の行列が真夏並みの混雑で甲府にても相変わらずだった。僕は夜叉神峠に二度行ったことがあるが、峠より眺める白根の姿は素晴らしかった。
 広河原で先ず腹ごしらえをして全員快調にスタート。大樺沢に沿いながらひたすら上へ上へと歩く。沢の飛沫のリズムで足を動かしているようだ。二俣まで3時間、ここで一本。いつもながらレモンの砂糖漬けは美味いなあと思う。頭上には雪渓と山頂が大きく見える。我々は八本歯のコルの方へ行くことにする。連休なので登山者は多いが、どの組も抜きつ抜かれつとスピードは大差ないのに、後から迫ってきたウーマンパワーの集団は「○○ファイトーッ!!」と叫びながら我々をあっけなく抜いて行ってしまった。僕はポカンとしていた。バットレスが異様に倒れかかるように感じる中を左寄りへ直上する。この辺りが一番働かされる所だ。やがて八本歯のコルへ出たが風が強いのと台風21号の心配もあるので直ぐに稜線小屋の幕営地へ向かう。テントを設営して食事を済ませ、アルコールを舌に転がせながら皆で歌を歌う。
 次の朝、5時半には下山行動に入る。登りは夏道で下りは冬路を偵察する訳だから下山ルートの方が大事なのだが、僕は冬のことは見当がつかないのでホイホイと歩いてしまった。テント撤収の時は小雨混じりだったがボーコンの頭まで来るとガスが出ている程度で、周りが良く見渡せるようになった。甲斐駒や八ヶ岳が見えるが僕にはどこが何処だか分からない。
 森林地帯に入り池山小屋を抜け深沢まで下る。最近はこのルートはあまり利用されていないようだ。野呂川に架かる吊橋は切れていたので河原に降り、渡渉することにする。靴を脱いで渡る。後ろを見ると、ややっ!!ラストの別所さんが最近リバイバルのクラシックパンツ姿で渡って来るではないか。急いでカメラを出そうとするが、こういう時にはなかなか出てこない。おしいシャッターチャンスを逃してしまった。
 林道へは1時間で出たが帰りのバスは満員で乗せてくれない。そこへ正義の味方のごとく現れたのがダンプカー、早速乗せてもらい先ほどのバスを追い抜く。値上げしたばかりのバスにキュウギュウ詰められて、皆が羨ましそうに見ていた。オープンカーのお陰様で谷の深さなどたっぷり見せてもらい、また台風の影響も全くなかったので、偵察の目的も達成でき快適な山旅でした。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ218号目次