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茅ヶ岳
小山 由美子

山行日 1973年6月10日
メンバー 野田、稲田、柴田、小山

 入会希望を出し、第219号「岩つばめ」を拝見させて頂いた時から、私など間違えて入ったのではないかと心配でしたが、今回の茅ヶ岳山行も案の条、その不安のまま参加してしまった状態で、同行の方々には最後まで御迷惑をかけてしまい、改めて紙面をお借りしてお詫びいたします。何ヶ月も山とは御無沙汰の上、心身共に怠け癖のついたまま参加させて頂いたことが原因と思われます。以後はせめて他の方々に迷惑のかからぬよう心がけなくてはと反省しております。
 さて当日23時50分発上諏訪行普通列車の中、これだけの人がどこかへ散らばるのかと思うと日本もまだまだ大丈夫などと思いながら、発車後うとうとしていると、暫らくして外に雨の気配を感じ、ふと不安になる。が、私も元来楽天的なほうで、「朝雨は女の腕まくり」とばかりまた眠りにつく。韮崎駅着3時36分。思ったとおり雨はなく身仕度してすぐ出発(登山口までの時間....まさか2時間とはつゆ知らず)。登山口、柳平までだいぶ飽きのくるダラダラ道でしたが、それでもこの間、同行の野田、稲田、柴田の三「田」氏の話も面白く、私一人で無責任に笑っていたように思います。
 そう言えば柳平少し手前で、一匹の孤独なカエルの死に出遭ったのであります。この山道、何と半日に一度車が通るか、通らないか程度の車跡しかないのであります。ということは、私の察するところ、このカエル向かいの畑の彼女?に失恋して思いあまっての自殺と思われます。この時ばかりは人ごととは思えませなんだ私。息のつまる思いで通りすぎた次第。せめて同情相憐れむの境地にて私が通りかかったことで成仏して欲しいと願ったものであります。また朝露のかかった草木を両側に少し歩くと、同行の稲田さん言わく、「あれ、かっこうだ」。声は聞こえど姿は見えずと先ほどより気になっていたのでチャンス逃がしてなるものかと枝々を追って見てみると、かなり高いところに黒く、細いその姿みつけたり。....と段々山登りらしい道と傾斜になり、雨あがりの薮で体がだいぶ濡れ、目の覚める思いでした。前記のように怠け癖のついた体で入山したため、途中女岩のちょっと手前でもうハアハア、女岩で休憩の後またちょっとのところで、ハアハア、ドキドキ。同行の皆さんに終始慰さめられての登頂で、つくづく私生活がこういう時に響くものだと感じたものです。また頂上では、一際目立つアルプスの山々と、雲海に暫らくはくぎづけにされたような次第。エデンの園とはあの雲海のような所かも知れないと思うと、何故か急にドキドキして淋しくなったのを覚えています。
 下山は林道までかなり急ピッチで降りたようです。時間的にみて余裕あらば昇仙峡へと思いきや、まっすぐ甲府駅へ。帰りの車中でのビールの味また格別。どなたでしたか、新宿歌舞伎町帰りのおじさん顔負けのいい顔色にて山帰りとは思えなかったよし。また野田さんとは途中でお別れ。残る3人が飯田橋中華屋さんに辿り着くこと6時30分。山行の反省会とは誰思うことなく、今日一日の締めくくり。柴田さんの大恋愛論にてピリオド。ということで今回は勝手ながら、私の注意力散漫も手伝って、時間的なこと、また山の状態、天候などに関しては詳細に印せなかったことお詫びします。次回からはきちんと記録させて頂きます。入会後初めての山と初めての原稿で内心慌てふためいています。これからもどうぞよろしく。
 朝霧の
  光るその色なつかしき
   幼きころの涙にも似つ(茅ヶ岳で)


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