トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ222号目次

勘七ノ沢
長崎 由岐子

山行日 1973年6月2日
メンバー 小島、別所、長崎

 6月2日、ACCIDSNTが2件ばかり続いて、勘七の沢出合いに着いたのは11時近く。この沢には昨年9月にも来たのだが、その時はF5の手前で左の小沢に間違って入ってしまい、散々な目に合って沢を下ったのである。怖い思いをした記憶もそう古くはなくて、それでどうしても再挑戦したかった沢なのだ。
 F1、トップの別所さんがどうということなく登った後、私はザイルなぞ投げてもらって瀑水左側を直登する。F2は一度高巻きの道に出た後、下って左側に取付く。堰堤に出て昼食。F3は小さな釜を持った滝で、左側をよじ登る。F4は二段の滝。下段を右より詰めてオーバハングした岩を左へ回り込む。滑べり易く、上段に出るまでに少々水を浴びる。続いて幾つかの堰堤。両側とも人の登った跡がなく、下に石が積み重ねられた堰堤に出る。どうするのだろうかと思っていると、別所さんが小鳥さんの肩の上に足を置いてよぢ登ったのです!ハッ、まさか。 「なにしてるの、早く」「だって」「だってじゃないョ、早く」
肩なぞまだ良い方で、頭の上にだって乗るくらいだから平気だといわれて、先輩小島さんの肩を借りる。
 いよいよ勘七最大のF5。ザイルをつけて別所さんが登った後、逃げ腰になって高巻きをするという私に、上から大丈夫だから上って来いといわれる。すぐに信じてしまうんですヨネ、私。瀑水左側を取付きすぐに水流に近付くのだが、取付口が悪く時間がかかって疲れてしまう。カラビナをかけ直した後、小さなスタンスを踏みはずして滑った。自分でもヒヤッとしたが、下に居た小島さんは足が震えたとか。
 F5の上は美しいゴルジュ。やがて沢は二股に別れ、ゴーロ状のいやな登り。本来のルートより早く尾根に取付く。天候は霧雨となり、丁度大倉尾根のハゲの真ン中に出たのだけれど何も見えず、小休止の後下る。大倉に着く頃には一際雨も強くなる。新松田よりバスにて中川温泉へ行き、箒沢山荘まで夜道を歩く。20分と云われたのに1時間もかかったこの道を、後発隊がもっと遅くに歩くのだと思うと、気の毒な気もした。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ222号目次