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小生の悪乗り山行記(三ツ峠)
稲田 竹志

 「ね!おねがいッほんの10分でいいからちょっとだけ寝かして....おねげぇでやんスネッ、ネッ頼むうッ」と哀願する人、小生。
 ここ三ツ峠の山中にある山小屋のコタツに目をつけた小生一目散にもぐり込んでやんス。あとのお二人さん仲良くお食事してる。なにしろ小生ここにたどり着く手前でほんの数秒でやんスが意識不明になったでやんス。この話ホラじゃないでやんスよ。それはもう睡魔なんてんじゃなく、そのままコトきれるのではと思ったほどで。
 それには深い深い事情がございまして、と申しますのは、小生の在住する市川の山ノ手の大邸宅より大型乗合い乗用車に乗りしおり実はこのバス、乗客は小生たった一入でやんして、雨あがりのディーゼル特有の臭いガスをたらふくくらってお恥ずかしきことで10年ぶりに乗り物酔いなんぞひきおこしダウンして、「オイッオキローッ」と運転手にどなられて目をまわしながら新宿へ。
 そして連休前夜の長蛇の列の登山者を横目に空席が沢山ある臨時の河口湖行きに乗ったまではいいんでやんスが、それからが悲劇で、この電車にはトイレがないでやんスよ....。
 乗り物酔いには寝るのが一番だと、飲んだ睡眠薬?が逆効果をもたらし「ああ三ッ峠の駅はまだかいなあ」と一睡も出来ないでやんス。また夜道でライトが故障し修理に小1時間を費やしたりで、ヶチのつきっぱなしでやんス。かくの如くでコタツでさぼる小生10分寝るつもりが何と2時間ものびてしまったでやんス。それからロッククライミングを見学して山頂へ至りて富士を仰ぐ。万葉の歌人よろしく歌なんぞこさえれば、
  富士の原
    ふりさけ見れば はるかなる
      八幡の宿に もゆる朝やけ
やや盗作めいてるでやんスがね。そして小生目的地の鶴ヶ鳥屋山へは行かず予定をごまかし高畑の村へ下山したでやんス。栗やあけびも採ったし、秋の快よい一日でやんした。
 秋、ああ風流だ風流だ。こんな調子の山行報告書いてて小生、ふと思うでやんス「俺、馬鹿かしら」と。


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