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春山合宿に参加して
北林 成介

山行日 1974年4月29日~5月6日
メンバー (L)別所、野田、北林、長崎、多部田、真木

 当会に入って2年になるが、合宿に参加するのは今度が始めてだ。そのうえ参加者の中では一番の高齢者であってみれば、少々気がひける感じもする。しかし、山への思慕すてがたく、精神的にはまだまだ若いつもり。20代のはりきりボーイだなんて過信して、元気に野反湖への道を歩き出した。
 天気に恵まれ空は快晴であったが、曲がりくねった道路をドライブに来た車に埃をかけられながらではなかなか先に進まず、気持がだれ気味で足が重い。同行の長崎嬢にも差をつけられて早くもダウン。それでも、どうにか野反湖に到着して先発の別所さん達に迎えられ、ほっと一息入れたその時、出してくれた紅茶のおいしかったこと!!
 それからは約1時間くらいでキャンプ地に着くとのことで夜のおかずにと山菜などを摘みながら楽しい道行きでした。
 5月3日の朝も快晴に恵まれ、前日の疲れはどこへやらと元気一杯になかなか意気盛んである。いよいよ本格的に縦走が始まって白砂山から佐武流山にと一気に行程がはかどる。山岳気分を充分に味わいながら快適な山行を楽しんだが、毎日の後半になると、いつもバテバテで大変でした。
 5月5日午前6時に全員が苗場山山頂に到着、360度の展望を楽しみながら先日より通って来た跡を目で追っていると一夜の泊りをした佐武流山の山頂を見い出し、懐かしく思っていると間もなく霧に隠れてしまう。こうして楽しみながらも同行者の皆さんに感謝した次第です。有難うございました。入山以来続いた天気もそろそろ怪しくなり出して、雲も遠くの谷間や上空から湧き出てくると、辺りの景色を灰色に包み込んできた。神楽峰を過ぎた辺りからは雨も降り出して鬱陶しい。視界も増々悪くなって小松原のロボット雨量計の付近からはだだっ広い尾根が続き、しかも残雪が多くて指導標も判らずルートの選定も判然とせぬままに行動して心配だったが、リーダーの先導と野田さんに守られながら一人の事故者もなく、無事に坂巻温泉に下山できて本当に良かったと思います。長いようでも短かった合宿山行も終わりに近づき、最後の夜を温泉に入って汗を流し山菜料理とビールに舌鼓を打ちながら思い出話に花を咲かせていると、かなり降り続いた雨音も夜更けと共に遠のいていくようでした。

白砂山~苗場山
真木 直彦

 バスを降りて歩くこと60分、大沼池は雪と氷に埋まる静寂の世界。踏み跡を残すのが罪悪のように感じられました。ここに佇む人は誰でもが詩人。そして思う人と二人ならばメルヘンを歌い、熱い胸に抱き寄せ黒髪に唇をつけ永遠の愛を誓うでしょう。男ならきっと....。かような淡い恋心を小さな胸に描きながら同行の人達を見れば、生活に疲れた36才の中年、疲れつつある30才の中年予備軍、食い気の張った色気の全くない20のガキ。現実の厳しさをまた知りました。何故私の傍にはこういう人が多いのかしら。Kさん、何だあなたは来なかったの。野反湖では37才の対象外のおじさんと結婚を控えてめっきり老けたおばさんが合流する筈。この山行でも恋が芽生えそうもないわ。
 このような複雑な気持ちで大沼池を去り、赤石山に登ったのです。
 この合宿で気付いたことを書きます。
 ダン沢の頭と赤倉山の山頂付近に於いて道が90度曲がります。地図を見て理解していた筈なのに、その場では適切な判断が下せませんでした。現に赤倉山では踏み跡があったにもかかわらず直進してしまって、赤湯に通じるサゴイ沢に向かって降りてしまい非常に時間を失いました。その上、サルノコシカケまで野田さんのザックに潜り込む始末。彼の話によると時価5千円とか。ほんとかしら。
 野反湖から堂岩山に通じる道が一部廃道になっております。冬季は尾根に出るまでは注意してください。予期せぬ時間を奪われる恐れがあります。
 そして小松原です。無雪期には道がしっかりしていると思いますので、少々のガス程度では迷うことはないと思います。ここも積雪期には要注意です。ガスで視界が閉ざされた場合は、絶対に小松原に入ってはいけません。地図では判断が困難な小さな尾根が入り組んでいます。時間的にどうしても坂巻温泉に降りなければならない時は、日陰山から小松原の方に入らずに、左側に硫黄川から突き上げる急な斜面がありますから、それと小松原の接点、つまり尾根筋に小松原を回り込むようにして降りてください。そうすると金城山に迷わずに行ける筈です。でも迷ったら、私は知りません。Kさんと二人で捜しに行きますわ。
 また、小松原を通る時はピッケルとアイゼンで武装してください。何しろ、時折熊さんが出るそうですから。
 注意事項はこれで終わりです。
 今年の春は雪が大変多く、グリセードを行うには絶好でした。それに天候にも恵まれ最後にちょっと降られた程度でした。
 しかし、三峰山岳会です。山小屋から油を拾ってきて山菜の天ぷらを食べようという人達。にもかかわらず、フキノトウ以外は全くなし。とうとう何やら怪しげな物を摘んできて天ぷらにして食べて満足顔。さすがに気が引けたのか毒草丸を飲む人もおりました。
 最後の日、秋山郷の寂れた温泉、坂巻温泉で長く楽しかった山行を振り返りながら疲れた身体を癒しました。


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