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その1 勘七ノ沢
桜井 且久

山行日 1974年6月2日
メンバー (L)別所、桜井、柴田、稲田、多部田、庭野、春原、北林、真木

 5月下旬、松谷君と同行した槍ヶ岳では稜線上にて吹雪かれ思わぬ退却を強いられたが、ほんの数時間の横尾辺りからは上半身汗だくの暑さであった。そんな訳で、山なんぞ秋頃まで足を洗っていた方が良さそうだと思い始めた矢先の春の集中への参加であった。おまけに、一際混雑を嫌うこの私が日曜日に丹沢へ日帰り山行をするというのだから、あまり気乗りのする筈がないのである。そういった悪条件にも拘わらず、感想を問われたら、かなり面白かったというのであるから、人の世は誠に儘ならないという他にないではなかろうか!
 兎に角、四十八瀬川林道の出合にてミズヒ沢パーティと別れてからF1からF4までは所々水しぶきを浴びながらも誠に快適に通過したのである。ところが勘七最大と称するF5に来てビックリ。ちょうど先行パーティがザイルを使って、切り立った12mの滝を直登しているのである。とても自分には登れそうもないのではと断念していたと思えばすぐ、他の者に登れてこの俺が登れぬ筈がないと居直ってしまうから、誠にこの私は幸福にできているのであろうか。そんな訳でこのF5は、僅かなホールドを頼りに一度登ってみたら、恐ろしいどころか面白いではないかと、わざわざ巻道を一度降りて私のみ今度はフリーで再挑戦した次第です。
 F5を越えると他には狭まり薄暗いゴルジュが続き、冷やりとした小滝の連続は沢歩きの醍醐味を満喫させるに十分であった。やがてガレ場が登場し最後の詰めにかかったが、ここでもドジな私は主役を演じてしまい、落石を出した挙句に10数m転落する羽目と相成った。それでもどうにか鍋割山頂にてミズヒ沢パーティと合流でき、長久さん特製の美味しいお汁粉を御馳走になった後、下山となった。ところが、ここでもまた春の陽気のせいかどうかは定かでないが、私も含めた狂気集団がバス停目指して早着き競争などという愚行を必死の形相にて演じるという真に充実しきった一日であった。その結果は年甲斐もなく能地、別所両氏が1、2位を占めたということを念のためお知らせしておきます。
(追記) もう一つ加えるなら、多部田君と新人の甲斐君はあまりに熱中し過ぎて道に迷い、結局バスに乗り遅れるというハプニングを演じた立役者であったということも明記しておきます。


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