山行日 1974年9月16日
メンバー (L)野田、別所(進)、別所(由)、平、春原、庭野、甲斐、勝田、他1名
いつもの私の悪いくせで一日目眠れず、二日目夜中の雨がテントの継ぎ目から顔の上に落ちてきて一睡もできず、ふらふらしながら起きた。昨日の予定では、大常木谷と火打石谷とに分かれるはずだったが雨のため大常木谷はとり止めとなった。
霧雨の中を出発する。伐採のため、木々が川をしばらく覆っていて水はたまにしか出てこない。一本立てるまで私は非常に苦しかった。二日間の不眠で平衡度ゼロ、木の上を歩こうにもフラフラ、手が何かをつかんでないと落ちてしまう。ちょっとした滝でも雨のためヌメリでうまくゆかない。今まで沢をやっていてどんな滝でも面白くてしかたなかったが怖いと思い、引き返したいと思ったのはこの沢が初めてであった。
それもどうにか一本立てた後は徐々になおり、何とかバランスもとれるようになった。
いつも同じことであるが、沢登りというものは非常に印象が薄い。視野が狭いからだろうか。登っている時は面白くて楽しくてしかたなくても、一度過ぎてしまえば思い出そうとしても、悪場の足場を探したその一部しか思い出せない。
その中でもやっと思い出した滝二つを書いてみる。
一つは沢の水が上から降り注ぎ、どうしても濡れるしかなかった。みんなが雨具を着て上からのザアザアの水をかぶりながら登った。私の前に甲斐さんが登る。雨具を着ていない濡れるつもりかなと思っていると、あの強引な腕力と脚力とで新ルート開発、ほとんど濡れないで登っていった。私は腕力には自信なかったが濡れるのが嫌なので後に続いて冒険してみる。どうにか濡れないで登り着いた。他の人々は雨具がビショビショ、私だけ得をしてしまった。
もう一つは、ある滝つぼに着いた。両側がつるりとした切り立った岩、巻き道はない。どうしようかとそれぞれ思っていると、リーダーの別所さん、突然ザブン。腰までの渡渉である。次々と後に続く。しかし腰近くまで濡れるというのは非常に気持の悪いものであった。