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初めての春山合宿
久保 孝子

 4日間の春山合宿でスキー班と訓練班に2日間参加することにした。本会に入ったばかりで、本格的な山登りは全く経験のない私には春山合宿がどんなものか、芝倉沢がどんな所か、全く知る由もなかった。
 行く前は初めての合宿とあって少々不安気味だったが、それよりもスキーができる喜びの方が大であった。しかし、この気持ちは楽しみから苦しみに一変してしまった。車から降ろされた荷物を皆のザックの上に乗せている様子を他人事のように眺めていた私のザックの上にもドサッと荷物が置かれたのだ。驚きました。まさか、このか弱い乙女に....しかし、私が甘かったのです。
 足許が頼りなくふらつき、これで2時間以上も登れるのかと恐れをなした。もう後には引けず、一歩一歩皆の後を付いて行くだけ。背中の荷が肩にズシリとのしかかり手の先まで痺れてしまった。「後、少しだ」と言う声を聞いて肩の荷が宙に浮いたように軽く感じた。
 目的地に着くと急に食欲が出てきたので、おむすびにかぶりつき空腹を満たした。ガスの点け方やテントの張り方など色々親切に教えていただいた。
 小休止した後、急斜面で特訓が始まった。山が私達を歓迎してくれたのか、素晴らしく気持ちの良い空であった。歩き方や滑落停止の練習をした。滑落停止をする時、どうしても万歳の体形になってしまう。正体形で停止するには腕の力が必要のようだ。あっちこっちで雪崩の跡を見る。別所さんが「ここは危険な場所だから間隔をおいて登れ」とのこと。不安が登るにつれて募ってくる。顔が硬直してきた。こんな場所は初めてなのである。いつ雪崩が起こるかわからない、もしあそこから雪崩が起きたらとかそんなことばかり考えて、誰かの後ろに付いて行かないと怖くて怖くて仕方ない。間隔をあけてもすぐ狭まってしまう。一歩一歩雪の上を踏みしめて皆の後に付いて行った。今まで雪とにらめっこしていたので素晴らしい光景に気付かなかったのだが、後ろを振り向いて雄大な光景に自分の目を疑った。
 頂上に登り着いた時の感激も筆舌に尽くし難い。ザイルの結び方を習い、下山する時二人一組になってザイルで体を結んだ。別所夫妻が先に降りて行く。15mくらい先を見るともう別所夫妻は見えなくなっているのである。それを見てまた足が竦んでしまった。竦むとかえって滑ってしまう。降りるのに慣れるとザイルを外した。雪の上をお尻で滑り爽快な気分を味わった。キャンプに辿り着くと満足感に浸った。テントの中は外の寒さを感じさせないくらい暖かい。夕食を食べ語らいが終わり長い一日が暮れた。
 翌日は天候があまり良くなかった。小雨が降っている。しかし、後半日しかないと思うと昨日の疲れなど忘れ、居ても立ってもいられないのでスキーを始めた(滑ったと言うよりも転がったと言った方が正解であろう)。スキーは去年始めたばかりで、私が知っているスキーはあくまでリフト付きのスキー場でのスキーである。今回もそのつもりだったのが来てみてビックリ、スキー場はどこにも見当たらない、本当に何も知らないということは恐ろしいことである。しかし、女の意地で滑ったのである。今思うとよく手足がくっついていたナーと思うのである。
 下山の時間となり後髪を引かれる思いでキャンプを後にした。


木村 眞人

 当山岳会に入って初めての山行、しかも春の谷川、何もかも初めてで期待と不安いっぱいで準備に取り掛かったのが出発の1週間前。それからというもの毎日用もないのにザックの中を引っ掻き回していた。ところがいざ出発という日に倒れてしまい仕方なく次の日に上野を発ったのだが....ところが土合まで列車がいかず水上で嫌々降ろされ朝まで眠れずじまい。何か不安な気持ちになってきた。しかし、土合に着いて歩き始めた途端、そんな不安は忘れ心うきうき、目は初めて新宿に来た時のようにキョロキョロ、周りを見ながら歩いているうちにB.Cに着いた。
 B.Cで休んだ後、笠ヶ岳へ向かった。スノーブリッジでは平然として渡る皆にビックリ。クレバスではヘッピリ腰、でも心は弾んでいたのでした。しかし、それもここまで。小さな沢を登り始めたら下なんぞまともに見られなかった。おっかないのなんの滑ったらどうするんだろうと考えゾオーとした。そしたら今度はブロックがすっ飛んで来る。もう必死で逃げた。後で転がって来るのをもっと良く見ればよかったと思った。それから笹の中、歩き難いのなんのって、それに雨まで降ってくる。ここでいっぺんにバテた。笠ヶ岳の頂上に着いた時はB.Cに居れば良かったとつくづく思った。さりとて帰る訳にもいかずジャンクションピークまで他のテントを羨ましげに横目で見ながら雨と風の中をフラフラ歩いた。
 次の日もフラフラ歩いていた。土の上より雪の上の方が歩き易いのはなぜか?
 蓬峠までは何も書くことはない、とにかくバテバテでフラフラ、ガスが切れて向こうの山が見えても夢のような感じで見ていた。蓬峠からは斜面の歩き方、シリセード、グリセード、滑落停止などを練習しながら降りてきた。


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