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スキーと私
小島 作蔵

 また、スキーのシーズンがやって来た。今でこそスキーを楽しめる程になったりしたけれど、これまでになるのにどれほどの時間と費用が掛かったか、切なかったこと、苦しかったことなどを紹介しよう。
(スキー入門の頃)
 私は小さい頃からスポーツをするのが大好きだった。小学生の頃は走ることと野球をすること、中学の頃は水泳と体操と卓球、そして高校に入るやどの部に入るか迷ったが友達がテニス部に入るからと言ったのが理由で入部した。本格的なスポーツはこのテニスが初めてだと思う、何の競技でもそうだろうが勝つことが最大の目標であり、勉強よりもテニスの方が大事に思われた3年間であった。このテニスは今でも続けている。
 社会人になってから2年目頃、友達に誘われるまま当会に入会し本格的な登山を始めたが、山の景色、花等には全く興味なく、重荷を背負い、寒さと闘い、困難な岩場とも闘い、それらを仲間と共に克服しテントの中で仲間と談笑する、それが楽しくて登山を続けた。会に入会する年の正月にテニス仲間の友達に頼んでスキーに連れて行ってもらった。赤倉のゲレンデでスキーを借りて滑ったが、見るとやるとは大違い、曲がるも何も真っ直ぐ滑って転んで止まるの繰り返し、いくら若いと(その頃私20才)いっても止まるために意識して、しかも帽子とゴーグルがすっ飛んじゃうほど思い切って転んでいれば身体はくたくた、バス道を滑って宿へ帰る時、バスと出くわし思うように避けられずバスの前で転んで止まり運転手に怒鳴られた。スキーのどこが楽しいのかなあ?その年の3月、3回目のスキーに行ったが山回り、クリスチャニアが出来る程度になり赤倉の前山ゲレンデというところで滑っていたら意識しないで転倒、右脚捻挫でその年のスキーは終わり。意地になり翌年正月やっと金一万円也で新品のスキーと靴を揃えて、再び赤倉から燕温泉へと2ヶ所のスキー場に行き、燕温泉から関山駅までのツアーは距離の長さで疲れてしまい転倒続出、取り残されて口惜しさと情けなさで泣けた、スキーのため正月合宿に入らなかった。代わりに成人の日に八ヶ岳地獄谷に入山したが、雪量と滝のブルーアイスに行く手を阻まれ、勇気ある撤退を余儀なくされた。スキーは未熟であったが、山の方は一人前になりつつあった、冬山に対する自信からスキーで吹雪の横手越えを行った。翌年正月は冬山に入り、以後しばらく正月は冬山で過ごすようになる。
(面白さが感じられた頃)
 穂高の正月合宿を散々な目にあって終えた1週間後に菅平へ行き根子岳へと登った、そしてあの広い斜面を滑って降りた、もちろん全身雪まみれ。それでも足を開いたボーゲンが殆どだったがとにかくゲレンデでない野性の雪の斜面、それも長い距離を滑った充実感が本当に嬉しかった。そして、テレビで三浦雄一郎氏の穂高直登ルンゼ滑降を見た時、本当のスキーはこれだと思い正月を除いた冬の間スキーに一生懸命になった。
 谷川岳田尻沢を夜行日帰りで行って6回滑ったこと、石打へ夜行日帰りで行って昼食も摂らずナイターまで滑り、夜行で石打を発ち朝上野に着き直ちに会社へ行くようなことをこの頃繰り返した。そしてスキー合宿は菅平で行い、必ず根子岳に登り滑ること、根子岳の野性の雪に勝つことが自分の目標だった。一方山の方も岩登り、縦走、そして山の予定がない時はテニスの練習と休日は全く家に居なかった。そしてスキーの技術もまあまあだと自分ながら満足していた。
(ハッスルした頃)
 パラレルができ急な斜面も転倒せずに降りられる程度になった頃、青森から来た一人の男とスキーに行き、その男と滑った時いままでのスキーの自信は吹き飛んだ。そしてその男と一緒に毎週のようにスキー場通い、正月も冬山に入らずスキー場で過ごすようになった。深雪の中でもがき苦しみ、月明かりを頼りに滑ったり、ポールを立てて競技スキーの真似をしたりしたが、目的は山に登りスキーで降りることである。このように練習するのもその目的のための一つの手段に過ぎない。やがて深雪を自由に滑れるようになった時、これならもう根子岳の斜面の野性の雪に対しても互角の闘いができるであろうとその年のスキー合宿で根子に挑戦したが、クラストしたモナカの皮にまたまた負けた。
(楽しんでます、この頃)
 昨年の正月と2月に赤倉と燕に行き、帰りは関山駅までツアーをした、初めてスキーを習った斜面を滑ったが何と斜度の緩いこと、関山駅のツアーは直滑降が丁度良いくらいの斜度で快適に滑った。昔苦しんだ所を快適に滑る時、苦労した頃が思い出され思わず笑顔になってしまう。やっと俺もどうにか楽しめるスキーができるようになった。
 これからはツアーを沢山やっていきたいと思う。そうそう、根子岳のクラストしたモナカの皮をやっつけること、ギャップを春原さんのように飛ばされずに滑ること、そして最大の楽しみは原稿、原稿とうるさい松谷君をスキーでしごくこと、今冬はそれを目標にしよう、ケケケケケ....。
 冗談はさておいて登山の面白さ、プラススキーの面白さ、イコール、無限大なのだ。
 スキーに行きたい方、今年から始めようと思っている方、いつでも声をかけてください、一緒に滑りましょう。


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