僕の横に今、誰かが僕のベッドを占領して寝ている。昨日の夜遅くなってやっと「悪い悪い」なんて言いながら自分の原稿を持ってきた。遅れたお詫びに校正、割り付け手伝うからなんぞと嬉しいことをぬかしやがったのも束の間、僕の紅茶やココアや食パンやカップヌードル式焼ソバまで食ってしまい、下で寝ているバアさんを悩ますほどの大声でのべつ幕なしに喋るだけ喋ったと思えば満足したのかグーグー寝てしまいやがった。畜生め!
平和を感じる瞬間というものが確かにある。この場合は奴の寝息と時計の音と遠くの貨物車の響きが痛々しいような雀たちの鳴き声に迎えられて、朝の光の中に明らかに白濁してくる、そんな瞬間何も考えずに済む安息の状況。ただ僕が何となく、しかし無性に怖いのはいったいそれがどういうものか分からないが、こんな平和に確実に敗北していく小さな自分をはっきり感ずる時である。