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第二合宿 西穂高岳
久山 学

山行日 1975年12月27日~31日
メンバー (L)稲田、野田、別所、鈴木、久山

 冬の上高地の美しさ、登りは辛かったけれどもそれ以上に見応えのあった冬の北アルプスの山々。そして新穂高温泉での成功の湯、そして日本の美町、高山植物と色々な良い思い出が沢山思い出されます。それらのことを今日はここに書き綴ろうと思います。
 先ず第一に気に入ったのは行きの電車の空いていたことでした。皆ゆっくり席につきこれからの山行のことを色々と話しながら酒を飲む。夏にはとっても思いもつかないことです。ここで一つ面白いことがありました。そろそろ寝ようかと皆酒を止め仕度にかかりました。私はトイレに行き用を足して帰ってみますと、何となく気まずさが漂っております。それに別所さんが寝ようとした所に新聞紙が敷いているのですが、当の別所さん違う所に寝ているではありませんか。おかしいと思い声をかけると「お前、そこに寝ていいぞ」とのこと。私も素直な20才、言われるまま横になりました。ところがそれから20分ぐらいたってから別所さん、後ろの席にいた3人のスキーヤーに向かって「俺達はもう寝るからお前たち静かにしろ」と怖い声で言うのであります。向こうは3人、こちらは5人なのでケンカになれば負けると思ったのかその3人、静かに何も言わなくなりました。後で聞いたところによりますと、寝ようとイスを動かしてたりしていた別所さんに文句を言ったそうで、それで皆頭にきてたそうです。別所さん、コワーイ、です。
 松本で乗り換えて新島々に降りてすぐタクシーに乗る。この運ちゃんがまたとってもおかしな人で私達を笑わせながら沢渡まで入る。ここで朝食を食べた。さあこれから上高地まで長い道を歩かねばと覚悟も新たに40分歩く。ここで一休みしていると向こうからトンネルで抜かれたタクシーが帰ってきて、私達が休んでいる所へ停まった。よく見るとさっき沢渡までしか入れないと言って私達を乗せた運ちゃんではありませんか。早速頼み込んで中の湯まで運んでもらう、途中土方のトラックに合い運ちゃん怒られる。中の湯からは上高地まであと僅かであるが長い。結構傾斜のある釜トンネルを抜けると白銀に輝く穂高連峰。空は雲一つない素晴らしい上天気である。「来て良かった!」これだけが私の心からの叫びだった。今回は田代橋と穂高橋の中間にハントを張る。その後は各自自由時間となる。私と鈴木さん、野田さんは明神池まで写真を撮りに行きました。別所さんは田代池へ、リーダーはテントの中で昼寝。今日の夕食のメニューは煮込み鍋。酒を飲んで8時に寝る。
 朝4時起床、朝食のメニューは煮込みうどん。今日も天気は良さそうだ。早速荷物をまとめ、未だ薄暗い中を西穂高山荘に向かう。いつものことながら、朝の1ピッチ目はかなり厳しい。一本入れてから野田さんを除き皆んなアイゼンを着ける。かなり高度を稼いだような気がするが、まだまだ登りは続く。急に傾斜が緩くなった所で一本入れて地図を見るともう近いようである。別所さんが、後10分くらいだと言うので喜んで歩き始めたが、またまた急登に次ぐ急登。精神的にも肉体的にも疲れが出始める。休んでいても元気がない。やっとの思いで西穂山荘に到着し、ただちにテントを張りそれが終わって今度こそ大休止だと思ったら独標までアタックとのことで皆んなガックリ。ややふてくされ気味に登りだしたが、登るに連れて元気が出てくる。素晴らしい眺めである。独標までは大して疲れることもなくことができた。そして独標での北アルプスの山々。感激して動きたくない気分でした。そしてテルモスの紅茶で乾杯、ゆっくり写真を撮り一路テントまで下る。途中、野田さんと別所さんがシリセードを見せてくれる。夕食はカレーライス。ここでも一つ面白いことが起きました。食事の前に例のよって酒を飲むのですが、これが何とロバート・ブラウン。三峰山岳会に入って初めての良酒。皆んな目の色を変えて取り合う。ところが別所さん、2杯ほど飲んだところでダウン。そのまま寝だす。食事もダメだと言う。そして小用を足しに出ると何とステーンとひっくり返る。「家では一体何を飲んでいるのですか、お尋ねします由紀子さん」
 30日は天気悪し。停滞かと思っていたら天気良くなる。ただ風が強いのが気になりましたが、やはり出かけるとのこと、仕方なく仕度にかかる。テントを出て3分くらいの所で野田さんのアイゼンが壊れてしまいテントキーパーになる。4人で昨日と同じ所を登る。やはり風が強いが谷川の万太郎の時よりは楽だ。この日はお花畑までで引き返す。テントの中で野田さんの作った昼食を摂る。その後、少々アルコールを入れその勢いでテントを撤収、新穂高温泉へと下る。やはり温泉はいい、成功祝賀会の後、流行のトランプ、ここでまた面白い話があります。一回上がるごとにミカンを一つもらえることになっていましたが、野田さんがなかなか上がれない、そのうちミカンの数が減ってきました。野田さん「ミカンなんか食べたくない」「黄疸になって死んじまえ」「同情は無用だ」などとわめき出す。まったくいろんな事がありました。
 31日はバスで高山で行き、日本の古町を歩き、蕎麦を食べ、地酒を買って電車に乗り込み、酒を飲みながらトランプ。新幹線の中でも全く同じ調子でした。
 はじめての冬山合宿に連れて行ってくださった稲田リーダー、色々なことを教えてくださった別所さん、ゲストの鈴木さん、そして弁当を手伝ってくれた野田さん、本当にありがとうございました。


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