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はじめに....
稲田 竹志

山行日 1976年5月1日~5日
メンバー (L)田部多、稲田(竹)、稲田(由)、山本、桜井、野田、久山、北林、下司

 活動できるメンバーがひところに比べ少なくなり、現存勢力維持のような形で合宿の計画は進行した。涸沢定着での計画も現地での悪条件が重なり、急遽岳沢に変更になり、我々のとったルートは非常に状況も悪く、ルート知識もなく動きに手間取りすさまじい落石の危険な状態となり断念することになった。穂高の人を寄せ付けない一面を見たが、その本番以上の緊張の中で参加された人はさまざまに感じたであろう。
 我々の行動を振り返ってみると成果という形はなかったが、田部多の受けた落石も軽い打撲で済み、突っ込んでしまった危険地帯の中を無理を避け無事降りたのも大きな経験であり、一つの成果とみたい。また停滞の日を有効に過ごす工夫がなかったことが反省点である。

春山合宿 その1
久山 学

 三峰山岳会の皆さん久しぶりです。小生沢合宿以来久々に登場させてもらえることになりました『無事カエル』です。沢合宿の時はご主人様のキスリングに付けられていたため、行動中のことは全然わかりませんでしたが、今回の春山合宿は胸のポケットでしたので全日一緒に行動することが出来ました。一口に言って今回の合宿は失敗が多かったようでした。小生、山のことはよく分かりませんが天気が悪かったので計画が180度変更になってしまって、成り行き任せの合宿になってしまったようでした。まあしかし、これも神様のいたずら仕方のないことだよとご主人様も言ってますように、まあ全員無事帰れたことを心から喜びする次第です。
 さて、4月30日は朝から雨。会社で仕事をしながら止んでくれ止んでくれと必死に祈っているご主人様の願いの甲斐なく、帰宅時間になっても雨は上がりませんでした。アパートに帰ってからご主人様は小生に向かって「これが夜行日帰りの山行ならば中止にするところなんだが、合宿じゃそうもいくまい」と言って傘を差しながら新宿へと出かけたのでありました。
 5月1日朝、目が覚めて列車の窓から外を見てみると、まだ雨が降っておりました。これじゃ上高地から涸沢までの間にずぶ濡れになっちゃうなァーなどとご主人様、心配のご様子でした。
 松本に着き上高地までタクシーで行こうと改札口を出てみるとタクシー乗り場は登山者でいっぱい。これじゃ電車の方が早いと切符を買いにいったところ、バスがストライキをやっていて新島々からの足がないと言われ、またタクシー乗り場へ。雨が降る中、少ないタクシーを求めて駅前広場をうろうろしながら立っていると、大雨でタクシーや車は沢渡までしか入れないとの声あり、まあしかし行ける所まで行くしかないとタクシー2台に分乗し松本を後にする。
 やはり車は沢渡までしか行けず、急遽涸沢から岳沢に変更する。これにはご主人様ガックリ。涸沢の色々なルートを調べ、計画を立ててきたのに....。
 気を取り直し沢渡から上高地に向けて歩き始める。冬山合宿の時もやはり沢渡から歩いたが、途中で中の湯までタクシーに乗ることが出来たが、今回はダメでした。それに今回は雨も降っていて最悪のコンデションです。それでも皆さん頑張って歩いていました。
 ご主人様は一人遅れてバテ気味。なんともはや、だらしがなく小生、穴があったら入りたい気持ちでしたよ。
 上高地入口着13時5分。沢渡発が10時だから3時間。そこから五千尺旅館前までが1時間だから合計4時間で着いた計算(ガンバリマシター)。一本取って岳沢に向かう。
 皆疲れが出てピッチが上がらない。やっとテント場に着いたのが17時0分。ご苦労様でした。酒を飲み、エサを食べ寝たのが20時30分。山本、北林、稲田2名、下司、久山はカマ天、田部多、桜井はツェルトでした(下司さんのアダ名生まれる『ゾウアザラシ』エッどうしてかって?それは本人へどうぞ)。
 5月2日午前3時起床。1時間ほどボケーッとタバコなどを吹かしているご主人様。前日の疲れが抜けきらぬようです。朝食の準備が終わって出発の準備。今日は重太郎新道から前穂高岳へ行く予定です。6時出発。アイゼンを付け、ロングスパッツを付け準備万端です。岳沢ヒュッテのすぐ傍で滑落停止の練習をして、急斜面を登り始める。途中から斜面がものすごくきつくなりアイゼンをしっかり踏み入れないと滑り落ちそうになるようでした。おまけに落石が多く、後のパーティの女の子に当たって声を出して泣いているような次第でした。途中で行動を諦め、もう少し上まで行く桜井、田部多氏の帰りを1時間ほど待つ。その間にも落石がガンガン落ちてくる。下りは途中まで慎重に下り、後はシリセードで快適である。ベース着、12時。午後は野田さんを待って昼寝とシャレこむ、結局野田さんは夕食を食べ終わる頃着く。遅かったので訳を聞くと徳本峠を越えて来たそうである。これには全員ビックリ(マダマダヤリマスナー)。ご主人様は酒の飲み過ぎらしく眠そうであった、この日も20時過ぎに寝る。
 3日は朝から雨、カエルの小生は大変嬉しいのですが皆さんはガックリ。下山組の桜井、下司、北林、山本各氏を見送った後、西穂沢へ向かって出発。行ってみると意外となだらかな沢でノーアイゼンで登ることが出来ました。斜面のきつい所でグリセードの練習をする予定でしたが雪が柔らかいためシリセードに変更になり、長い下りもとても嬉しく下ることが出来ました。ベースに帰ると人数が減ったためか何となく寂しい夜でした。
 4日目。今日は雨がかなり降り行動は無理にてテントの中で一日過ごす。雨漏りがひどくビチャビチャになる。明日は下山なので食べることばかりで長い一日でした。
 5日目は曇り。早々にテントをたたみ下山、上高地にて写真を撮り松本までタクシーで行く。列車は混んでいたが全員座れ、夢から覚めたら東京でした。

久し振りの合宿
山本 義夫

 編集委員より原稿を頼まれて一度は断る。とはいえ私も以前、原稿集めに苦労したことを思えば少しでも書かなくてはなるまい。
 4月に合宿への誘いがあったが行こうか行くまいか迷っていた。何しろ最近、大きな山から遠ざかっていた。と言うものの重荷に喘いで登る時いつも思うのだが、ハァハァと息が切れ始めた頃、私は「来るんじゃなかった」と後悔していた。
 天気が悪いせいだろうか展望のないコース自体もあまり魅力がないせいだろうか、なにか吹っ切れない思いのまま、舗装道路を歩き出した。今回は荷が軽いためか自然とペースは早くなり、あまり雄弁でない私も度々会話が出てくる。これも主にに喘いで登る時は黙りこくって歩き続け、たまに「休もうか」「休もう」といった程度でも苦しいものだ。
 テント生活で酒を飲み、久し振りにピッケルを持ち、アイゼンを付け、山に来たという実感が湧いてきた。
 私にとっては北林さん、稲田(由)さん、下司さん、久山君とは初めての合宿であり楽しい山行でした。


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