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滝子沢山行
柴田 隆一

山行日 1976年5月30日
メンバー (L)別所、今村、松谷、柴田

 5月29日新宿3番線、21時発甲府行き普通列車、最後尾車両に集合とのこと。8時過ぎに指定の場所に赴くと松谷君が来て列車に乗り込むと、そこへ別所さんが来た、新宿からは私を入れて三人、ボックスの空いた席には大正末期から山へ行き始めたという老人が座る。昔々の山行きを色々聞いて立川で今村さんが乗り込んでくる。老人は話が佳境に入り下車駅を乗り過ごす。山の話が一段落したところで、別所さんのところに長男誕生、5月25日生まれたとのこと、今村さんとこは5月5日長男誕生、二人とも妻子をほっぽり出しての山行なんていいのかいな。たまの休みに家庭に居なくてと思ったら、家に居てもおろおろ、うろうろするだけでそれに赤子が泣いてろくに眠ることもできず、またろくにかまってもらえないとかで?、山へ行って祝杯をあげてぐっすり眠りたいと、親父になった両氏はおっしゃいました。10時半過ぎに初狩着、駅前で酒を仕入れ、明日登る滝子沢の取付き口に向かう、今夜はそこでビバークを予定し、その前に焚き火をし酒を飲もうとの計画だ。初狩駅から小1時間、堰堤の上で付近の檜や杉の下刈りされた枝を集めて酒盛りを始める。檜は火に油を注いだように勢いよく燃え上がり、両氏の親父になった喜びを祝福しているようだ。午前2時堰堤にてビバーク、朝6時起床し出発する。午前中さえ曇りのままでいてくれたら沢登りも楽しかろうにと思う。沢の入口の所で少し時間をロスする。沢に入りどんどん詰めて行くが、行けども滝もスラブも見当たらず、沢は岩で埋まり一時は沢を間違えたのではないかと考えた。が、この沢に間違いなく、沢自体の楽しみは半減したが霧に包まれて歩く自然の中というのも悪くない。いや、楽しい思いだ。山頂に於いても視界は悪く何も見えなかったが会員との山行ほど楽しいものはない。下山になり小雨がパラつくが静かな山行であった。桑畑、蚕農家の集落を通り初狩へ、自然を満喫した一時を過ごした。


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