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仙ノ倉谷ダイコンオロシ沢
野田 昇秀

山行日 1976年7月18日
メンバー (L)野田、久山、播磨、木村、柴田、下司

 大根おろしのように滝が連続しているのでこの名前が付けられたという。その連続している滝も10m程度のものでさほど困難なものはない。北尾根のお花畑も美しいという。
 土樽の駅を降りると今村君が待っていた、毛渡沢の出合では播磨、川田君が温かい味噌汁を作って待っていてくれた。吊橋を渡った所でシッカイ沢組と別れて仙ノ倉谷へ向かう。平標新道が仙ノ倉谷を渡る所で身支度を整え飛び石伝いに仙ノ倉谷へ入って行ったが、出合が沢の様相をしていないので適当な所から藪を漕いでダイコンオロシ沢に入る。水流も少なく沢床も小さいので本流と支流の区別がつけにくい、1時間ほどうろうろ登った頃、日白山にガスがかかり雲堤が押し寄せると天候が急変、大粒の雨が降ってきた、雨宿り1時間で青空に変わる。小さな前線が通過し、以後回復に向かうと判断し登行を続ける。伏流だった沢床も今の雨でかなりの勢いで水が流れている。第一の滝に出ると小滝の連続である、ほとんどを下司さんトップで登る、久山君は下からアドバイスする、木村、柴田さんもバランスよく続く、播磨、野田の老人組はおじゃま虫のようにのそのそと後を行く。日白山にガスがかかるとまた雨が降り出した。しばらくすると雨は止み青空が出る。これを何回か繰り返すともう雨は止まなくなった。先ほどの前線通過は悪天の前触れだったのであろうか。二俣から右に入ると急なスラブになるが、ホールド、スタンスともに豊富で快適な登りである。草付から小笹に入るとすぐシッケイの頭に出た。横殴りの雨の中を川田君達が登っているシッケイ沢に猛登のコールをかけるが聞こえそうもない。ツェルトを張り待つ約束であったが雨で引き返した可能性があるのと、私達も全身ずぶ濡れなのですぐ下山することにした。北尾根を進むと右側に小さなケルンがある、ここからイイ沢に入る。名前の通り途中滝がなく下降にいい沢であった、約1時間で仙ノ倉谷に出る、朝飛び石伝いに来た所も増水でじゃぶじゃぶ水に入らなければ通過できなかった。毛渡沢出合の飯場のストーブにあたらせてもらい、濡れた物を乾かしてから土樽の駅へ向かった。
 駅には川田君達は来ていなかった、駅の伝言板にも記載なし。播磨、野田が駅で待つことに決め、4人は5時の列車で先に帰った。
 暗くなった雨の中を駅の外で待つが来ない。7時を過ぎる。悪天なので登山を中止して先に帰ったのではないかと思い川田君の家へ電話をかける。「播磨ですが川田君はいますか」「今日は山へ行ってます」「それならまた電話します」家族に心配かけないように気を使っている。帰っていないとなると何かあったのではないか....土樽駅員もいつまでも駅に居る私達を心配して相談にのってくれる。8時が過ぎる。もう待っているだけではいけないと、先ず長久さん宅に電話を入れるが留守であった。土樽山の家へ相談に行ったところに駅から電話が入り無事なことを知った。
 イイ沢下降点を間違え私達の登ったダイコンオロシ沢を下降したとのこと、さぞ大変であっただろう。全員無事がなにより嬉しかった。すぐ入ってきた列車に乗り帰った。


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