トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ230号目次

その5 山と情熱
稲田 竹志

 遭難の実態を考察、分析することは山岳誌や新聞などを利用していただくとして、会報として公の目を通して事故に対する個人個人の安全登山の意識が高まることを特集の意義であることを願う。
 こと遭難そのものは全体的レベルの問題ではなく個人の問題とみる必要がある。山を見る目(登山観)、山に対する情熱と姿勢(方法)は各自様々だから....。やはり山はそこにあるだけなのだ。
 山の魅力は一つは自然との調和と、もう一つは困難の克服にある。自然との調和は問題ないが、困難を定義づけることは困難だ。危険と困難の境界なんてありゃしないし、またそれも山の複雑な魅力の一つだ。
 傍目で見れば一文の得にもならん山へ出かけるのもその人の価値観がそうさせるのであり、山好きはそれで満足する。価値観は行動の原動力だ。世事や金儲けや出世競争にはそれほど関心がないのが山屋の共通点、人がいいのかも知れん。純真なのかも知れん。山屋の根底には自然に触れるロマンがある。だが一つ間違い事故を起こせば非常に悲惨な結果になりかねない。
 悪天ならば機会を待てばいい。山への執着がある限り山は逃げはしない。もう一歩の慎重さを持つことによって山への情熱を燃やし続けようではないか。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ230号目次