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小春日和の谷川岳
鈴木 一利

山行日 1976年11月20日~22日
メンバー (L)稲田、久山、鈴木(一)、中村

 魔の山と言われる谷川岳に冬山訓練の一環として入山することになりました。
 田尻尾根ではラッセルになるとのことでワカンを買い、爪の取り付け部などを補強しながら、初めての山、谷川岳に想いを寄せる日を過ごしていました。
 当日、私は久山さん、稲田さん、中村さん達と上野で顔を会わせると何が何でも谷川岳の頂上に立つぞと意気込んでいました。
 ある有名な作家は「トンネルを抜けると、そこは雪国だった」と書いたそうですが、さしずめ私達は「土合の階段を登ると雨だった」なのです。山に登る時に雨に遭うことのなかった私はステーションビバークをするうちに意気消沈していました。そのうちにステーションビバークもしていられなくなり身なりを整えて土合の駅を出ると、うす雲の空に小雪が舞っていました。その中を歩く私は朝から意気消沈しているので足が重く、田尻尾根に取付くまでに嫌になってしまったが、田尻尾根の取付きに着くと何と雪がないのです。まったく、その時の気持ちはラッセルがなく助かったと思いましたが、傍を行くロープウェイを見ていると今度はあいつに乗って天神平まで行くと楽だろうなと考えていました。天神尾根に向けて田尻尾根をジグザグに登って行きましたが、どうしても天神平のスキー場に行くロープウェイが私たちの傍を通ると、荷物を放り投げてロープウェイに飛び乗りたい気持ちでした。
 登りながらずうっと私は自分に羽根があったら山も谷も自由に飛べて楽しいだろうとか、山頂と麓をロープウェイで結ぶといいだろうとか、そんな気持ちでいるうちに熊穴小屋に着きテントを設営して谷川岳へアタックに行きましたが、頂上に立っても大して視界も利かずテントに帰りました。
 2日目は前日とはうって変わった小春日和の良い天気でないか、私の気持ちまで急に明るく楽しくなりました。谷川岳へ再度のアタックに出発し、山頂で仕事の都合で下山しなければならない中村さんと別れ、一ノ倉岳、茂倉岳を登り、オジカ沢の頭まで行き万太郎山を見物してきました。今日の谷川岳は風もなくポカポカ陽気なので足取りも軽く谷川岳散歩という感じでした。テントに帰り、私には初体験の天気図をラジオから取り、稲田さん、久山さんと明日の天気判断をやりましたが、まだまだ私はラジオから取るのがやっとで下山したら天候の勉強をせねばと反省するのみでした。
 3日目は相も変わらず天の良い中を心残りでしたが巌新道を下り、谷川温泉で3日間の疲れと垢を落とし、ビールで乾杯しほろ酔い気分で楽しい谷川の山旅を胸に帰ってきました。


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