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冬山偵察 ~独身男二人の楽しい山~
鈴木 一利

山行日 1976年10月31日~11月2日日
メンバー (L)桜井、鈴木(一)

 まだ正式に三峰に入ってもいない私は、ただ無性に登りたいということだけで冬山偵察に参加させてもらうことになりました。
 偵察は今まで何度か行ったことのある北岳でしたが、吊尾根からは初めてであり、ガイドブックによると厳しいコースとあり、内心穏やかならず、その上初めての人との山行で迷惑にならねばよいがと危惧しながらも行くことにしました。
 新宿でいつものように23時55分に乗りましたが、日曜日の夜だけに空いているのが何かと勝手が違い驚いている内に、闇の中を一路甲府に向かう車中の人となっていました。
 甲府の駅でのビバークは当初予定していたバスターミナルではできず、駅ですることになりましたがシュラフなど出す気にもならず、寒気の中椅子の上で縮こまって一番バスをひたすら待っていました。
 バスの中では深沢下降点に近づくと「農鳥岳の馬」というかすかに農鳥に積もった雪の中に黒い岩肌で造られた馬を見ているうちに深沢に着いた。
 同行の先輩である桜井さんが何かと気を使ってくれるうえ、足取りも軽くなり、身も心も軽やかな山歩きが始まり、砂払い近くでテントを張ることができました。
 この夜、独身男二人の友情をアルコールを忘れた私達はジフィーズと紅茶で温め合うのでした。
 2日目は天気も良く、北岳へのアタックを行い、お互いにいい男と慰め合いながら見合い写真を撮り、バス時刻を10月末日までのと間違え、一汗も二汗もかき、バス停でリスの冬籠りに向けて忙しく働く姿を眺めているうちに、山の早い夕暮れが辺りを包み始めるころバスに乗り、楽しい思い出の吊尾根と別れ心の中では、30kgの重荷を担いで冬に登りたくないと思いながら甲府に向かった。
 甲府でビールと旨い肉うどんを食べて山の疲れを吹き飛ばし、元気で帰宅した。


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