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その3 結婚して これから
木村(平) ふみ

 ヒマラヤトレッキングから帰り、間もなくして結婚した私はヒマラヤの夢を悠然と思い浮かべる暇もなく新生活に入ってしまった。頭だけではなく身辺も混沌としている中で一人から二人の生活が始まり、とめどもない日常生活に追いかけられる日々となった。結婚後の生活は独身時代にも漠然とは考えていたが、いざ自分なりの生活をしなければという時に躓いてしまった。付き合いが短かったせいか相性というより二人の共通の目標、私自身の目標など、結婚してから考える部分が多かったのである。幸いと言おうか、たっぷりと時間を得ることができたのでこれを機会に山について思いついたことを書いてみたいと思う。
 勿論、結婚前、結婚後も山に登り続けたいという気持ちは変わらないし、別に行けなくなると考える必要は全然ないと思う。生涯登山ができたら本望である。ただその人を取り巻いている環境も月日とともに色々事情は異なってくると思うから、無理のない状態で山に行ける機会を自分で作り出していくことが大事なのではないだろうか。
 私はここしばらく山から足が遠のいてしまった。体の調子が悪かったせいもあるが、これに対し私なりに感じたことは、経済的裏付けがないこと。一人の給料で二人が満足のいく生活はかなり難しいということである。それに所帯を持つと現在の生活のみを大切にするのではなく、将来への生活空間を求めがちで次第に行動範囲が狭める傾向がある。これは個人差があると思われるが。
 独身時代と一番違うことは、例えば意志の決定を相手に委ねるということではなく、同意を得る段階がお互いに一つ増えたことだろうか、時間がかかるのである。
 今までは時間があるから山に行ったのではなく、時間を作って行った気がする。まだ若いせいか、そういった姿勢で山に行きたいと思っている。
 生活には小さいリズム、大きいリズムが必要だと思う。それがなかなかつかめなくて困ったが、山に限らず色々チャレンジできる対象を見つけ、積極的に生活に望みたい。これは私自身への問いかけであり励ましでもあるのだが。


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