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両神山~南天山やぶこぎ縦走
松谷 洋美

山行日 1977年2月11日~13日
メンバー (L)松谷、今村、多田、奥住

 松谷洋美、23才、違いの分かりかけた男である。スランプの真っ只中にあるにもかかわらず山に来れば心身共に好調。相棒は藪山ナルシスト今村氏、少女漫画の一コマから抜け出したようなオカズ(奥住さん)、山高帽にステッキの似合いそうな例のカズ(多田さん)、三峰きっての絶倫、うっとりトリオに率いられて南天山への藪山大縦走を目指す。
 2月13日、立った、遂に立った。ここ奥秩父山深く潜める南天山、鬱蒼と木々に囲まれ視界のない頂。我々が越えて来た両神、赤岩、天丸山、その全ての頂、それを結ぶ全ての岩とそして藪が目を閉じれば浮かび上がる。長く苦しい岩と藪の縦走であった。ルートを失えば今村さんが的確に指示を与え、難しい岩場でもしっかり歩いたカワイイ、オカズとカズ。猛烈に藪を漕いだ南天への道、素晴らしいチームワークはここ南天の頂を保証した。我々はこれまでの道程を心の内にしっかり刻み込むかのように何度も頂を振り返りながら大滝村、広河原沢へと藪を下降し始めたのであった。
 これが出発前に僕が抱いていた最終下山構想である。しかし、事実はどうか?予定前コースの1/3以下、八丁峠~赤岩峠間のあるピークで行き詰まり、最終3日目には途中の谷を使って下山するはめになった。
 八丁峠~赤岩峠間はこの山行の核心部ともなるコースである。数あるピークを越えまたは藪から巻き、歩を一つ一つ進めてきたのに何とあるピークからストンと岩が切れ落ちている。巻き道を探したがルートが取れず何とか岩場のコルまでへつりながら降りてみたものの、それから先の岩場がこれまた問題。日の入りも間近とあって....という次第である。
 今日は非常に眠いので後は雑感。
 女の子は山へ連れてくるべし。チョットした岩場でも「キャー」「ワー」「ん」とかの嬌声を発してかわいくなるから。ルームで熊のような人ばかりと見られる三峰の女もいざ山へ入れば本当は子猫ちゃんであることを発見するでしょう(もちろん相変わらず山でも熊のままという女もいるにはいるが)。
 藪は踏み跡がなければないほど面白いということ。トップで歩いていてわずかながらの道を辿るのにあくせくしていると「なんだ、まだ道がついているナァー」と今村氏、これにはマイッタ、マイッタ。
 以前に苦労して登った二子山がとても小さく下に見えたこと等々。
 先に進めなかったものの、また一つ目標ができたこと、次回はザイルの一本でも担ぎ込んで赤岩からのルートをつなげてみるか。もちろん南天も行くべし。
 眠い、今日は眠いぞ。よって徒然なるままに心移りゆくようなことをそこはかとなく書き綴ってみるのもここらへんでご勘弁を。

両神山 その1
奥住 かずみ

 今回は天候に恵まれていて幸いであった。雨か雪でも降っていたらお先真っ暗であった。先ず1日目の両神山を目指していたまでは、いくらかの不安はあっても気分的には上々であった。なにしろ展望はばっちりであったのである。しかし、それからがいけなかった。両神山頂から八丁峠まで急な岩場の連続で冷たくなった手で鎖を辿り、怖さを堪えるのに賢明であった。その上、日は落ち暗くなってしまったのである。どうも私は暗い中を歩くというのが弱いようである。
ルートファインディングの面白さも知らない代わりに恐ろしさも十分知らない我々は、二人の先輩について行くばかりであった。そして赤岩峠に出る道が見つからない時、今村さん、松谷さん両氏は二派に分かれて探しているのであるが、我々は何の役にも立たず、ただ二人の戻るのを待つばかりで、道の見つからなかった場合の算段をしていたのである。結局道は見つからずその日はビバークということになったのだが、やはりそうなると残念であった。しかし、そんな中でも藪の中を歩きながらコース説明のない道を探して歩くこと、そんな山というものにも私は魅力を感じた。藪の中での休憩で枝に積もっている雪を口にほおばって食べたことの美味しさ、格別であった。

両神山 その2
多田 和恵

 木曜日の朝、起きてみると何と雪が降っている。これはついてないと思い不安でもあった。木曜日の夜行で出発し金曜日に両神山に向かう。天気はとても良く空が抜けるように澄んでいてとても気持ちがいい。そこまではともかくゆっくりと遊びながら登ったが、八丁峠に続く鎖のついている岩場が怖くて怖くって、ただ今村さんや松谷さんの言うことを神の言葉のごとく忠実に守る以外生きる道はないと信じ必死でへばりつくしかなかったのです。
 結局、目的地の八丁峠までは行くことはできず途中でビバークをし、次の日は赤岩峠を目指すが道がないので散々迷った末、またビバークとなる。最後の日は思ったより簡単に降りることができた。
 今回の山行は会に入ってからの初めての天幕生活で色々と勉強になったと思う。でも全く役に立たなく迷惑の掛けっぱなしだったので申し訳ない気持ちです。


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