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気象講座 その6
春田 正男

◎天気の型
 長い期間毎日天気図を見ていると気圧配置や天気分布からこれを分類してみると西高東低型、南高北低型などの数種類の型に分けることができる。同じ型の天気図は似たような天気分布や天気変化の傾向を示す割合がかなり多いことが判ってくる。西高東低型と言っても更にいくつかに分類ができますが、先ず基本となる天気図型と台風のうち主要なものを挙げてみます。
 1.冬型(西高東低)
 2.台湾坊主
 3.温帯低気圧
 4.移動性高気圧
 5.梅雨型
 6.夏型(南高北低)
 7.台風
 8.北高型
 9.帯状高気圧
 10.その他の型
 冬型(西高東低)と夏型(南高北低)は冬と夏の季節風を吹かす型であり、台湾坊主は冬期日本の南海上にある寒帯前線上にできる低気圧。温帯低気圧と移動性高気圧は主に春秋に偏西風の波動の山と谷に対応して訪れるもの。梅雨型は6月~7月にかけオホーツク気団や揚子江気団と小笠原気団の境をなす梅雨前線が日本付近に停滞してできるもの。北高型は高気圧が北偏して日本に訪れるもの。帯状高気圧は中緯度高圧帯が発達して日本付近を覆うもので、理解しやすい各型のうち典型的なものを選んで列記したい。

◯冬型(西高東低)
 日本の西方の気圧が高く、日本の東方の気圧が低い西高東低型は中国大陸方面に高気圧があり、一方日本の東方海上や千島、アリューシャン方面に低気圧のある気圧配置である。冬の期間一番多く現れる型で冬型と言われる。日本海や東支那海から日本付近を通過した低気圧の後を追って大陸から高気圧が張り出してくると西高東低の気圧配置となる。
 冬期シベリア、蒙古方面では地面が極端に冷却するため地上付近の空気の温度も低くなって重くなるので、寒冷な空気の一団は海洋上にある温暖な空気より気圧が高く、このため冬期は常にシベリア付近に高気圧が形成される。この高気圧をシベリア高気圧ともいい、非常に低温で乾燥しているのが特質である。シベリア高気圧の勢力は7~8日周期くらいで強弱を繰り返すことが多い。大陸の冬は三寒四温と言われるが、三日寒いと四日暖かい日が続くことで、シベリア高気圧が周期的に変化することを示している。シベリア高気圧は偏西風の波動が大きく作用しているものと考えられている。冷却された寒気団に偏西風の嶺が重なると優勢となる。高気圧の勢力が増大し、ある限界になると強い風が吹き出し、その後に弱まりの現象が繰り返される。日本付近では低気圧や寒冷前線の通過後2日くらいは強い季節風が吹き出し、寒さが加わる。一方東方海上では低気圧が猛烈に発達する。このとき典型的な西高東低の気圧配置となる。季節風が収まると朝晩の冷え込みは強いが日中は南よりの風も吹き寒さが緩む。その後、東支那海に気圧の谷や低気圧が現れて発達しながら日本付近を通り更に東海上に達すると、また西から高気圧が張り出し再び西高東低の気圧配置となる。天気図上では等圧線の数が多いのが特徴で高気圧と低気圧の差が100mb以上になることがある。冬期は特に日本付近を通った低気圧が東方海上やアリューシャン付近で960mbとか950mbというように大きく発達し、時には北太平洋一帯がこの低気圧の影響を受け、太平洋の北半分は1週間以上にも渡って強い西よりの風が吹き続くこともある。この風を大西風とも呼んでいる。この風は太平洋航路の障害となり、また漁船の遭難の原因となっている。冬の季節風は時間が長く広範囲に渡ることが特徴でこの天気図型を特に冬の季節風型という。シベリア高気圧から流れ出してくる大陸の空気は日本海を渡るうちに温暖な海水のために下層から次第に暖められて不安定になり、また水蒸気を補給されて積雲状の雲が多くなり、水蒸気を含んだ空気が日本の中央山脈を越える際、強制的に上昇させられ、従って気温が下がるため含まれている水蒸気は雲となって空中に浮かび、雨雲となって降るため風上の日本海側の天気を悪化させる。これに反して山脈を越えて吹き下る空気は下降気流となり気温が上がり雲は消えるため太平洋側の各地は乾燥するのもこのためである。強い季節風と共に火災の起き易い状態となる。冬期の日本海側の天気の悪いこと、積雪の多いことは世界でも珍しい。年間総雨量のの半分はこの季節風による。寒冷前線通過後季節風の吹き出しに伴い猛吹雪となり、北西の風が収まるまで続き、また一夜に1m以上の積雪となることもある。このように西高東低の気圧配置は日本付近一帯に北ないし西より強風を吹かせ、日本海側や九州の西側の各地は雪や雨となり、時には暴風雪となる。この反面太平洋側の各地では乾燥した晴天の続くことが特徴である。

◯台湾坊主
 冬から春先にかけ台湾付近や東支那海南部によく低気圧が発生する。2~3日吹き続いた季節風が収まり、高気圧が日本の南方海上に舌状に張り出すと満州西部から南に延びる気圧の谷が東進してくる。
 南西諸島南部付近では東よりの風が南東の風に変わり、南から暖気が入り込み、この暖気が台湾の北東海上で大陸からの寒気との間に前線を作る。この前線が次第に北に押し上げられ等圧線は膨らんで坊主のような形となりついに低気圧が発生し、このようなことから台湾の北東海上に発生する低気圧を台湾坊主と呼んでいる。
 台湾坊主が発生すると九州地方では24時間ぐらい後には雨となることが多い。台湾坊主は初め北東に進み九州南方海上から本州の南岸沿いに東北東に進み、三陸沖方面に進むものが多い。速度は速くて発達するものが多い。
 このため天気の変化が早く、夕方まで良い天気であっても翌日は雪か雨になったりする。雨の降り出す時刻の予想は難しく、本州の南岸沿いに前線が発生すると東海道や関東地方等では低気圧に伴う雨域の移動よりかなり早く前線性の降雨は始まり低気圧の雨に続くこともある。また、台湾坊主も春になると日本海に入るものが出てくる。しかし、日本海に入っても沿岸近くを通り太平洋側の各地でも影響を受けることが多く、時には暴風雨となることもある。

◯温帯低気圧
 日本付近など熱帯地方以外は発生する低気圧を温帯低気圧という。温帯低気圧と熱帯低気圧ではその成因や構造が違うが、その大きな違いは温帯低気圧は前線を伴っていることである。
 低気圧は周囲より気圧の低い所で中心付近の等圧線は閉曲線をなしている。もちろん強弱によってその大きさは違う、前線付近で等圧線が急に折れ曲がっている。一般に温帯低気圧のことを低気圧と呼んでいる。
 低気圧は通常南西に延びる寒冷前線と南東に延びる温暖前線を伴っている。寒冷な気団と暖かな気団が互いに接触しているところで前線を境として気温、含有する水蒸気の量、風向、風速などが急激に変わっている。温帯低気圧はこの異なった気団と気団の間に発生し発達するものである。
 低気圧がどのように発生するかは寒気団と暖気団が接触しているとき、何れかの気団が優勢となると、そこの部分が押されて波形になり更に押されると波は益々大きくなる、そして遂には渦巻きができ低気圧が発生する。大気中でこの波を起こさせる役をするのが偏西風帯の波であると言われている。
 また一つには晴れた日中、内陸では局地的に熱せられ、その空気が膨張して上昇気流を生じ地形性の低気圧ができる。このように局地的に熱せられてできる低気圧の規模は小さいが、この発生した低気圧を発達されるものは何かと言うと、結局前線を境として存在する寒気団と暖気団の気温の違いであり、含まれている水蒸気ということになる。寒気団は重いため暖気団の下に潜り込み暖気団に上昇気流を起こさせる。気温の差が大きいほど激しく強い風が吹く。上昇する空気は冷却して雲を作るが含まれている水蒸気が多いと凝結する際に放出する熱エネルギーにより上昇気流は更に強められて低気圧は発達する。このことから低気圧は寒気と暖気が一番多く流れ込みやすい位置にある時に最盛期となり、従って低気圧は衰弱することになる。
 低気圧はこのように声質の異なった空気が渦を巻き上昇気流を起こし、強い風を吹かせ、雨や雪を降らせるわけであるが、低気圧の域内ではどこも一様な天気ではなく前線を境として非常に違っている。


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