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何一つ予定通りいかなかった山旅
中村 弘志

山行日 1977年7月14日~17日
メンバー (L)中村、鍵山

 梅雨明け宣言を聞き快晴の山を期待して東京を発ったが豈図らず大町に着いた途端に雨が降り出してしまった。7月に入って3度目の雨とか。何ともついていない。東電による荷物運搬も16日からということで再びがっくりしてしまい、監視所のおじさんとお茶を飲みながら1時間半を過ごしてしまった。出掛けにおじさんから「温泉に泊まっていったら?」と言われる。余程我々が頼りなく見えるらしい。まあしかたない。中村さんと鍵山さんの二人連れでは....。
 傘を差しながらとぼとぼ歩くこと2時間半でやっと濁沢に着く。ここで1時間の休憩、この先ブナ立の登りを考えるとうんざりしてついつい「ここで帰ろうか」などと口走ってしまう、すると鍵山さんもすぐに同調する。
 こんな二人で登れるだろうか?しかし、ここは男の子頑張らなくては!!
 アルプス三大急登の一つに取り付いて7時間、遂に稜線に飛び出した。実に辛い登りだった。もう二度と来ないだろう(と言いながらこれで三度目なのだ)。30分歩いては10分休み、これでは二人だからよかったようなものの他の人がいたらきっと置いていかれただろう。
 4時起床。さすがに目覚まし時計の威力絶大と言いたいが、お互いに相手を起こしては自分はシュラフに潜り込んでしまう。結局出発したのは7時半、朝食も摂らないのにどうしてこんなに遅くなってしまうのだろうか?誰か分かったら教えて!
 初めは青空も見えていた空から雨が落ち始め、次第に暗くなり遂には暴風雨(一寸オーバーだけどこうでも書かないと理由がつかないのだ)になってしまい、野口五郎で行動を打ち切ることとし小屋に潜り込む。まだ10時30分だ。
 天気も次第に回復に向かい夜には星が瞬き流れ星も見えるようになった。そのうえ布団に寝られるとあって、ついついはしゃいでしまう。
 翌朝は3時に起きることにして目覚ましをセットする。ところがところが、奇跡が起きたのである!! あの鍵山さんがなんと目覚しの鳴る前の2時30分に起きたのだ、しかも私を起こすのである。もう少し寝ていたかったのに....執念というのは恐ろしやー。
 紅茶とメロンだけの朝食を済まして早速野口五郎岳に向かう。山頂で早起きしたという証拠に御来光の写真を撮り、快晴の縦走路を一路雲ノ平へ向かう。日本中の山が見えるみたいだ。花も咲いている。途中、岩苔乗越の雪渓でグリセードをして遊ぶ。傘と落ちていた棒切れで。
 祖父岳を越えれば憧れの雲ノ平だ。上から見るとなんだか花が少ないようで一寸心配になってくる。下ってみると案の定花などない。「なにが雲ノ平だ!」「誇大広告じゃないか」鍵山さんのがっかりした様子がはっきりわかる。かわいそうに、せっかく苦労してここまで来たのに。
 こんな所に長居は無用と薬師沢出合まで一気に下ることにする。ところがこの下りが恐ろしく急なのである。ここを登って来る人が気の毒に思えてくる。やっと出合に下り着くと吊橋がある。これを渡れば今日の行動は終わりだ。薬師沢小屋で幕場を聞くと小屋番氏ニヤリ。なんだか嫌ーな予感、なんと去年より幕営が禁止されたと言うのである。どうしよう、これから太郎兵衛平までなんて登れる訳がない。しかたなく小屋泊りにする。今夜も布団ではしゃげるかと思いきや同宿者が続々と来る。我々を入れて6人である。食事を終えて帰ってくるともう皆寝ている。「早いなー」
 朝、4時半起床、我々にしては毎日よく起きている「偉い、偉い」。朝食はプリン。
 今朝も雨が降っている。4日間のうち3日も雨だなんてあまりにひどいじゃないか、皆さんもそう思うでしょう。?
 太郎兵衛平まではのんびりとした楽しい道だ。どうせ12時のバスには乗れないのだからとゆっくり行く。太郎兵衛平もなかなか気分の良い所だ。この辺りより天気も段々良くなってくるが薬師は見えそうでなかなか見えない。
 後は折立への道を残すだけ....。
思ったより早く下ることができ、12時のバスに間に合ってしまった。しかし、このバスが楽しく、またまたはしゃぎ過ぎ周りから好奇の目で見られてしまう(いつもならこんなじゃないんだけどな、相棒がいけなかったのかな?それともお互い様かな?)。滝を見て「わーっ」、吊橋を見て「わーっ」、トンネルに入って「わーっ」、バスが揺れて「キャーッ」実に賑やかである。皆さんも一度このバスに乗ってみたらいかがですか、楽しいですよ。
 今回は始めから終わりまで何一つ予定通りにいかずハプニングの連続でしたが、それはそれで楽しい山旅でした。色んな人がいたし休憩も多かったし....。
 皆さんも30分歩いて15分休みという余裕?の山行をしてみてはいかがですか。それなら私も付いていきますので。


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