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鳳凰三山
堀内 享子

山行日 1977年10月8日~10日
メンバー 堀内、他

 新宿駅は連休の前夜で登山者姿の人々でごった返していました。3~4時間待ってやっとの思いで列車に乗り込み、「みんな座れたか~」「ここが空いてる」とか声を掛け合って総勢15人どうにか全員座れたようです。メンバーは会社の山好きな人達、と言っても山は今回が初めてなんていう人も何人かいます。甲府で降りて夜叉神峠までタクシー。本当はバスが走っていてその方が安くていいのだが時間が早くまだ走っていないのでタクシーで行くことになりました。
 夜叉神峠入口で降り、そこで明るくなるまで少し休み、朝食を済ませて水の補給、明るくなったら出発、残念ながら空は曇っているので夜叉神峠に着いても何も見えません。曇ってて何も見えないけど道は緩やかだし、まだちょっと早い紅葉がチラッと顔を見せてなかなか快適に進んでゆきます。苺平はその場所のちょっと手前の方に広々とした所があって、そこが苺平かと思ったらリーダー格の人が「もう少し先にあるよ」なんて教えてくれたりして。この会社にも山に登る人がいるんですね。私は今までそういう人はここにはいないと諦めていたんですが。
 薬師岳というのは本当にきれいな所ですね。白砂を敷き詰めてある所に大きな岩がニョキッと突き出ていてバックには半分紅葉した樹林が雨に煙っています。その日は藥師小屋に泊まりました。◯◯みたいな所に10人くらいずらっと寝て隣の人の足が重かった。
 2日目は昨日とうって変わった良い天気。朝食はパンと紅茶。うん、このピーナツクリームはなかなか美味しい。紅茶は需要が多くて供給が追いつかない様子。チーズは外国のチーズだとかで一口食べたら気持ち悪くなりそう。まずくて食べられない。やっぱり日本人にはあのプロセスチーズが合っている。さあ食事はもうこのへんにして出発。白砂の中を歩いているともうすぐ観音岳。しかし、この辺は本当にこれが山の上とは信じられないくらい。砂と石と松があってまるで自分達が小さくなって日本庭園の中を歩いているよう。観音岳に登ると北岳が目の前に見えます。あれが北岳。私はこの7月に北岳に登ったのです、その時はもうバテてバテて、でも2日目小屋からまた登って朝日を見に行った時は綺麗だったな。その山が今、大きな雲に遮られそうになりながら私の前に聳えています。今度はコンデションを整えてバテないように登らなきゃ。いつか必ず行こう、そう思いながら私はその山を眺めていました。
 お天気も良いし北岳をバックに撮影会。みんな一人ずつ岩の上に乗っかってハイ、ポーズ。さあ早く行きましょう。
 あの地蔵岳の巨大石の塔は一体何なのでしょうか。どうして出来たのでしょうか。畳一畳か二畳分くらいあるようなのっぺりした岩が積み重なって塔を形作っているのです。白砂に敷き詰められた頂上にぬっと飛び出しているその様子はとても美しく、人間の力では及ぶべきもない自然の驚異です。
 人間はとても小さく愚か、でそして私達も非常に愚かでした。お昼ご飯のスパゲッティを小屋に置いてきてしまったのです。小屋まで同行した人のザックの中にスパゲッティは入っているのです。あー15人の飢えた胃袋を残りの食料でいかにして補うか、お餅とミートソースと僅かな野菜。その日のお昼はロシア風雑炊とでも言うような何とも得体の知れないもので、それでもどうにか15人の口、全員にはいき渡りました。
 鳳凰小屋では御座石鉱泉に行く道がよく分かるようになっていて、青木鉱泉にはまるで行けないみたいに言うそうですがそんなことはありません。途中、滝がいくつかあってとても綺麗ですし、第一青木鉱泉はとても良い所です。建物はいいしゆっくりくつろげて疲れを癒やすには絶好です。宿の人は親切だし、私達は行かなかったけれど傍に東洋一と言われるような大白樺林があるのだそうです。駅まではマイクロバスで送ってくれます。
 今回、山は初めてという人も全員バテることなく元気で降りてきました。どうやらここにも山岳会ができそうです。


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